2013/1/11 <塌腰(ターヤオ):たったこれだけで腰痛解消?>
夕方、私の最初の生徒さんの一人である女性よりメールが送られてきた。
表題は『感謝です!』。
以下抜粋。
「最近ずっと練習をさぼって怠惰な生活を送っていたら昔患った腰痛が再発。腰が鉄版のように固まって痛さも半端じゃない。夕飯の支度もそっちのけで30分站樁功をし、夕飯作った後にまた30分、そして夜の洗濯干しの後にまたまた30分、計1時間半の站樁功でどうにか乗り切り、恐れていたぎっくり腰にもならず、今日は仕事に行けました。・・・今また腰が重くなってきたのでまた家に帰って站樁功をします。
この腰の痛みは暮れからサボった罰でしょう。反省が長続きしないのが反省点。
站樁功のやり方が正しいのかどうか自信はないのですが、とりあえず私の腰には効くようです。本当にありがとうございます。」
彼女は初めて練習に現れた時、とても腰を反らして歩いていて、見てすぐに腰痛持ちだと分かった。腰を伸ばす(塌腰※下で再度説明します)ことを教えたのだが、彼女にしてみれば ”良い姿勢=胸を張り腰を反らす”、と思い込んでいるので、私が教えるような姿勢は”猫背”の何物でもなかったようだ。「こんな猫背で良いのですか~?」と何度も聞かれたのを覚えている。
しかし、その後腰痛から解放され、「腰には自信があります!」と豪語するまでになるのだが、そこで、本人も認める持病の”サボり癖”が発症。喉元過ぎれば熱さを忘れ・・・練習もサボりサボり、水が低きに流れるよう、安易で怠惰な生活に陥りがちになった模様。私達の練習が終わった頃にやってきて練習後のお茶だけに参加、ということもあったりした。
が、今回、またあの辛いぎっくり腰を再発するような瀬戸際になって、自助手段として站樁功で凌いだとの話。
腰痛は腰椎の反りを真っ直ぐに整えることで大方は解消する。
そのためには站樁功でその状態を作って、しばらく漬物を漬けるがごとく、身体に重しをかけたまま(=重力に逆らわない=放松)じっとしておくのが効果的だ。身体が次第にその姿勢に慣れていく。力を抜いて息を止めずにじっと腰のあたりの開きを感じておく。
そうやって力を抜いて開いた後に、腰回しをして腰椎あたりの柔軟性を増すようにする。
まずは站樁功で”開き緩めて”(松開)、それから動功で”揉んで柔らかくする”、その2段構えが大事。
緩んでいないのにいきなりストレッチしても効果が薄く、無理やり引っ張れば筋を痛めてしまう。
腰痛に悩む人は思いの外多いが、そのような人は腰が反っていて、腰椎の両側から体側にかけての筋肉(内腹斜筋だと思う)があまり発達していない(ただの”お肉”になっている)。だからお腹も緩んでぽっこり。
これを解消するのが、塌腰(ターヤオ)の要領。
以前コラム「無極站樁功の要領①」の中に書いた要領だ。
そこではこのように説明した。
5.塌腰(ターヤオ)、斂臀(リエントゥン)
腰が下に垂れ下がったように引っ張られ(塌腰)、腰の椎骨節や皮膚、腱が真下に向けて伸ばされた状態。
この時おしりは少し前方に巻き込んだようになる(斂臀)。所謂「でっちり」の反対。
この要領は、床に仰向けに寝っころがって、腰と床の隙間がなくなるよう、腹圧で背中を内側から床に向けて押してみると分かりやすい。背骨が全て真っ直ぐべた~っと床についている時は、お腹も引っ込んでいる。力が身体の中心(=下っ腹)に集まる。
もしこの状態のまま背伸びをすれば、その中心に集まった力が、手の先から足の先まで達し身体に力が充満するのが感じられる。身体の外に力が漏れない(これが太極拳の際の身体の使い方)。
逆に、腰を床から浮かした状態で背伸びをすると、力が”すっこ抜けた”ような感じ、言い換えれば、身体の外に力が漏れてしまってうまく手足に伝わらないのが分かるはず。
私達が直立している時も、上のように腰が床を押しているような力が常に働いていなければならない。これが、今流行の言葉で言えば”体幹”を作る。
最初は、ぐっと力をこめてお腹で背中を押さなければならないかもしれないが、これを站樁功で練習すれば、実はそれほど”力任せ”にするものではなく、腹式呼吸を腹、腰の胴体全体で行うとそうなることも分かってくる。会陰も自然に引き上がる。
完璧な站樁功をしようとしても、そんな簡単にできるものではない。一つ一つの要領をクリアしていきながら、徐々に完成形を目指していく。
そして站樁功の最初の関門が、「命門を開けること」即ち、塌腰(ターヤオ)だ。
これが第一。これができなければ、他の要領をクリアするのは不可能。
ちょっと立って、腰を伸ばしたまま静止する。
これは電車の中でも、レジに並んでいる時でもできるので、腰に問題のある人は特にしょっちゅう実践したら良いと思う。
※背骨の調整についてコラムに参考資料を載せました。
画像で示していますのでご覧ください→コラム「背骨の調整」へ