2017/5/14
<呼吸と息について>
本当にこの練習メモから遠のいてしまった。
思いついたことをLINEのようにそのままここに書いて良いもよいかしら?
私が母からもらったワンコはこの夏で13歳。所謂老犬の域に達してきた。
数か月前から呼吸の時にブーブー音がするようになった。
食べる時以外はほとんど寝ている。私が帰宅しても以前のように玄関で出迎えてくれなくなった。
家の中を探すと、大抵寝入ってしまっていて、ドアの音はおろか、私が近づいて横にいても気づかないようだ。触ると、ぴくっと驚いたように起きる。
散歩に行くととても元気な足取りだが、やはり次第に老いていくのが分かり、なんだか寂しい。
呼吸が人に分かる、というのは身体が悪い証拠。
呼吸を診ているとうちのワンコもどこかが悪いに違いない。
寝ているときも呼吸が時に不規則だ。今年3歳の白猫がすやすや眠っている時の呼吸とは全く違う。
太極拳の大事な要領の一つは『匀』。むらがない、凸凹がない、という意味だ。
歳を取ってくると動きにも呼吸にも凸凹のむらが出てくる。スムーズに滑るように滑らかな動きができなくなってくる。スーパーでお財布からお金を出そうとしている老人の手元を見ていると、こちらのもどかしくなってきてしまうが、何もしなければいずれはそうなっていく。呼吸も次第に浅く、むらが出てくる。呼吸のむらは身体の動きのむらとなって現われてくるから呼吸を整える、調息は大事な練習だ。
呼吸の四相は、風、喘、気、息。
第一相の風。
呼吸をする時に鼻や口から風が漏れている。これはとてもまずい。
第二相、喘。
平常時なのに、走った後かのように、ぜいぜい不規則な呼吸。これもどこかに問題がある。
電車に乗っていて隣の人の呼吸が聞こえるとしたら、隣の人は上の、風、か、喘、の呼吸をしている。
第三の相は気。
これは外に音は漏れていないが、体内で空気が動いているのが見て取れる、もしくは察知できる。健康な人が活動している時はこの呼吸であることが多い。よ~く観察すれば吸っているか吐いているかが分かる。
第四相は息(丹田呼吸)。
これは呼吸が外から分からない状態。腹の奥、丹田で呼吸している。所謂腹式呼吸で腹をペコペコさせているようなのではなく、吸っても吐いても腹が膨らんでいて中の丹田だけがペコペコしている。静功で入静状態、瞑想状態にはいると呼吸は息になる(逆に言えば息にならないうちは入静状態に入れない。)
武術では、相手に呼吸がバレると隙をつかれてしまうので、相手に呼吸が分からないように息をする。下手をすると息を殺しているか、堪えているかのように見えたりするが、本当は腹の奥でゆったり息をしているので、息を殺したり堪えているのとは違い、身体が硬直することはない。丹田呼吸で気が全身隅々まで行く届く分、身体は伸びやかになる。
太極拳の練習は丹田を掴み続ける練習。
丹田から離れず身体を動かそうとすると、嫌でもゆっくり動かざるを得ない。
ゆっくり動くと自然に呼吸も引き伸ばされてゆっくりになり、次第に腹(丹田)が刺激されて息が現われてくる。
呼吸は身体の動きに随う。
呼吸を操るのは骨が折れるが、身体を意識的に動かすことは比較的し易い。
身体を意識的に操ることで自然に呼吸も調っていく・・・太極拳は呼吸を学ぶとても自然な、理にかなった方法。
もちろん、呼吸を整えるのに静かに立つ、静かに坐る、静功という方法もある。
これは外の意識的な身体の動きはないが、自然な身体の内側の動きに随う方法。身体の内側に随っていれば自然に丹田に気が集まってくる。外から操作しない。
いずれにしろ、『随う』・・・『随』も太極拳のキーワード。
(腹だけを無理やり自分で膨らませたり凹せたりする呼吸法も巷にはありますが、滑稽に見えたりする以前に、自分で無理やり動かすこと自体、太極拳的観点から言えば、不自然。早く結果を出したい人達は様々な技法を生み出しますが、最終的には諦めて自然に随うのが早道かも・・・)
以前、『息』という漢字の成り立ちを調べて驚いた。
息は”自分の心”とかいう俗説を聞いたことがあったが、本当は”鼻+心”。
”心をもって鼻と為す”、即ち、心を鼻のようにつかって呼吸をする→心で呼吸をする、の意。
胎児が母親のお腹の中で、鼻口を使わず母親の心臓の鼓動の力を借りて呼吸していた、それ
が『息』。沈静、安定、気の動きがあるかないか分からないような呼吸。
ちなみに古人は、口を開いて吐くのを”呼”、口を開いて吸うのを”吸”、胎児が鼻口を使わずに呼吸するのを”息”と呼んでいたとのこと。
一度『息』の要領が掴めれば、逆手に取って、呼吸を息にすることで心身を鎮めることができる・・・そんな練習をしていかなければなぁ。やっと実践の段階に入ったところのよう。
<追記>
ワンコには太極拳教えられないし、呼吸どうしたものか?医者に連れて行ったら間違いなく薬漬け・・・。