2021年9月

2021/9/30 <チェリストの肩>

 

 昨夜は久しぶりに演奏会に行った。エッシェンバッハの指揮でパリ交響楽団が演奏、前半はドボルザークのチェロ協奏曲、後半はブラームスの交響曲第1番だった。どちらもどこかで聞いたことのあるメロディが含まれていて観客がノリやすい曲だ。

 

 私が興味を持ったのは前半チェロ協奏曲でチェロを弾いたシェク・カネー=メイソンという若者。シェク自身はヘンリー王子の結婚式で演奏をしたことでとても有名になった。彼の家族は7人兄弟、それが皆演奏家だという。

 

 私はバックステージ側に座っていたのでシェクの後ろ姿しか見れなかったのだが、チェロを弾く背中がとても柔らかくて弧を描いていて、背筋を伸ばしてピンと張っているオーケストラの演奏者たちとはかなり違っていた。背中が若い・・・のだけど、いや、この背中のしなりは黒人独特のものだなぁ、しかも肩甲骨がそのまま上腕骨と一体化してる・・・ゼロポジションのままだ・・・と見入ってしまった。(※ゼロポジション 例えば→https://www.hb-nippon.com/column/523-self/13062-20181127no206self

 

 オーケストラの中のチェロやバイオリンの演奏者の後ろ姿を見てみると、シェクのようには肩甲骨と上腕が一体化していない。シェクと比較すると背中が硬くて背中に伸びがないのが分かる。ああ、だから背中は”弓”になっていなければならないのね、と、太極拳で体は『五弓』(背中、上肢、下肢の5本の弓でできている)、背中はその中でもメインの弓だと言われることを思い出した。

 


 

  後ろから見ると”背中が開いている”のがよく分かるのだが、演奏中写真撮影をすることができなかったのが少し残念。前からだけでは分からないことがわかる。太極拳でもそうだし、歩き姿も後ろから見るとその人の特徴がとてもよくわかる。背中や肩の表情がある。ゆったりした背中、それを”弓”と称したのかもしれない。背中がゆったりして初めて肩甲骨が自由になる。背中が硬直したり萎縮したり貧相にならないようにするには・・・やはり内気、丹田(腹)の気、腹腔の腹圧が必要だろう。太極拳の練習はその間中背中にストレッチをかけたり外したり、絶えず伸縮を繰り返している。背中を活き活きさせる、そのために腹が必要、そのための丹田だ。

 

021/9/25

 

 今日は起式、第2式金刚捣碓、第3式懒扎衣の用法説明をしてもらいました。(youtubチャンネルに撮影動画があります。)

 印象に残った懒扎衣の重心移動の部分をショート動画にしてみました。

 

 

懒扎衣の意味はいくつかあるようだが、どれもパキッとしない。英語にすると Lazliy Tying Coat というようだが、動作の形がそう見えるか?というとよく分からない。

中国では、武将が戦う前に丈の長い衣の裾をめくって帯の中に差し込んだ様をいう、と一般的に言われているようだ。(それでもまだはっきりしない・・・)

 

と、名前はともあれ、この懒扎衣、劉師父に説明してもらうと下のような用法が含まれている。

 

 まず私(相手)が腕を推してくる(ジーしてくる)のを”化”して私(相手)を”落空”させる。

 ”化”して”落空”させるこれが太極拳の太極拳たるところ。

 打つ前には大抵そうしている。

 

 ”化”というのは”化勁”ということだが、意味は、相手の力に逆らわずにその方向に従いながら相手の力の流れを変えてしまうことだ。その結果、相手の力が削がれて”落空”させられてしまう。

 言い方を変えれば、相手の力を削ぐために相手の力に沿って円運動をしつつ、同時にそれが次の攻撃のためのエネルギーを溜めることになる(蓄気になる。 防御しながら攻撃に転じる、そんな一連の動きだ。

 

 師父は私のような技の初心者に教えるために、ゆっくりと分割してその過程を見せてくれている。まず相手のジーの力に沿って身体や腕を動かし相手のジーを無力にする。この時、同時に左足に力を落として次の発勁の準備をしていることに注意。そして一気に右へと打つ。相手の腕を掴み下半身の力で動く。

 

と、教えてもらって早速私も試してみたが、案の定、第一回目は大失敗。

 

 師父のジーの力を削いでさあ攻撃!と思ったものの、師父の体の重さに負けて右へ重心移動できなかった。「腕を引っ張らんか!」と言われ、はっとし、師父の片手を掴んで引っ張りながら動いたらどうにか打つことができた。(左のGIF画像)

 

 

 ここで一つ学んだ。太極拳ではほとんどの場合、片手で相手を引っ張りこみながらもう片方で相手を打っている。套路の時に打たない方の手の動きが大事になるのはそのためだ。

 

 とはいっても、左の画像を見て通り、無理やりどうにか師父を右に推しただけで、どこにも”巧”(巧みな)感じはない。師父は好意で後ろに仰け反ってくれている(苦笑)

 

 ここで師父が私に、次は「下半身の力で推すように」と示範してくれた。

そのあとやった動作がこの2枚目の私の動作。

 

上半身と下半身が師父のようにぴったり合致はしていないけれども、上の私の動きが上半身の力で動いているのに対し、2回目の動きは股や骨盤(下半身)の力で師父を運んでいる。

下半身が水平移動したのが、その動作中に実感できた。(そして”下”というのは思っていたよりもさらに”下”で、感覚的には相手よりも”下”にいることで相手より有利になる、そんな感じでした。)

 

 上下のGIF画像の中の師父の足の動きをよく見ると、上画像では、師父は自分で足を動かして後ろに倒れてくれているが、下の動画では(私に)足を動かされている。

”まず相手の根っこを引き抜く”というのが太極拳の鉄則。ここでいう”根っこ”とは”両足の根っこ”のことだ。先に足を掬ってしまえば体の小さい私でも師父のような体を動かすことができる。ここに太極拳の”巧”が表れる。

 

 この”相手の根っこを引き抜く”というのは、単純なリューでも同じだ、と今日学んだばかり。リューだからと言ってただ引っ張ればよい、というものではない。相手が動かない状態の時はまず相手の足元を掬ってしまってから引っ張る必要がある。では、どうしたら相手の足元を掬えるか? と、今日実験したら、なんてことはない、自分が腰以下の力で動けば相手の足は外れるのでした。ただ、腰からジーやリューをする時に肩や肘や手首に余計な力を入れない、というのがとても難しい・・・相手に手を掴まれていたり腕を押されていたりするとどうしてもその部分に力が入ってしまう・・・触られている部位に力を入れないようにして下半身から力を通す、というのは意識面、神経面での訓練も必要だと思いました。そこまでできるようになるのはもうしばらくかかりそう。

 けど、刺激を受けている部分に捉われない、それがうまくできるようになったら日常生活でもストレスが激減するに違いない。太極拳の技で学ぶことは日常生活での心の持ち方にも応用可能で、実はその、太極拳よりずっと大きなもののために太極拳を学んでいるのではないかと思うのでした。

2021/9/23<師父の発勁 弾ける力>

 

  発勁の箇所をいくつか見てみました。

 まずは第10式掩手肱捶。

太極拳の発勁は丹田の気を一気に爆発させて瞬間的に末端まで貫通させる。

 撃ち抜く、打ち抜く、感じ。打ち抜いたあとは空っぽ。ゴムのように戻ってくる。

 師父の発勁を前面から見るとボクシングのように見えたりする。丹田の爆発は腰の回転と丹田の気を腹底へ押し込むことによって行われるから、気が頭の方に上がって顔が赤くなったりこめかみに青筋が立つようなことはない。左のような空手の形での発勁はあくまでも力を”見せる”ためのパフォーマンス。実践ではこんな風にはしないのは空手でも同じだ。

 

 師父の掩手肱捶を後ろから見ると、左肘も後方に発勁しているのが分かる。後方の敵もこれで打てる。一回の発勁で前後打てる、一石二鳥。

 

太極拳のイメージは蛇・・・が、猫パンチも似てる。

 

←蛇VS猫の動画がありました。https://youtu.be/UnQKMtaEl94

 

パンチし終わると自然に引っ込む。蛇の頭も同じ。

打ち抜く=発勁するから自然に引っ込む(戻る)。ゴムのようになっている。打って腕が伸びっぱなしだとしたら勁が貫通せずに残ってしまっているから(下の動画などはその例)

 

 右は https://youtu.be/p-1V97YTX8E の中の発勁練習。

 

 肝心な腹腰、すなわち、丹田や腰の力が全く使われていないのが分かる。

股関節や足の力では発勁できない。

 師父の動作と比べると違いがよく分かると思う。

 

 下の第13式青龍出水や第17式退歩圧肘の発勁を見ると、発勁には丹田と腰の回転・柔らかさが必要なのが更によく分かる。下半身で発勁するのではなく、胴体で発勁する。

 ちなみに下の青龍出水と退歩圧肘の箇所は発勁の際の身体の使い方がほとんど同じだ・・・身体を左に捻って右に捻り丹田を圧縮(集気の段階)、その上で、さっきの捻りを解くように身体を落下させる時に一気に発勁する。ここでも猫や蛇に見られる”弾ける力”が見られる。

2021/9/22 <師父の背中>

 

 見慣れているはずの師父の後ろ姿でしたが、動画に撮って見てみると師父の背中(腰)のダイナミックな動きに驚きました。

 

←左は第6式白鹤亮翅の導入部分。

https://youtu.be/wjmmpMKj0fg

 

陳式一路では第5式单鞭から白鹤亮翅へと体を東向きに移行する際の動きを第6式金刚捣碓としているのだが、馮老師が混元太極拳を編纂した際に金刚捣碓の部分は第6式白鹤亮翅に含まれてしまった。

 

左の円の動作は、ここから金刚捣碓、もしくは体を南から東向きに移行するために必要となる丹田の動きをあらかじめ練習させている部分だ。

 このように意図的に余分とも思える円を描かせるのが混元太極拳の特徴だが、そのおかげで、その直後の動きや技にはどの円(丹田の回し方)が使われるのかがわかるようになっている。ある意味、太極拳の種明かし、核心を見せているようなところだ。

 こういう箇所は内功そのものなので、3回円を描くところを5回にしようが10回にしようが構わない。套路の中でも内功ができる=丹田の気を練りながら運用することができる。馮志強老師の功績は、それまで師弟間でしか教えられてこなかった太極拳における丹田の気の運用方法を套路の中で誰にでも分かる形で公開したことだと言われている。

 


  ここで上の師父が時計回りの竪円を描く後ろ姿を見ると、背骨(特に腰椎)がうねっているのがよくわかる。その背骨は頚椎から尾骨まで、折れることなく龍のようにうねって動いている。

 

 師父の背骨を見ていると、中国でよく見かける龍のモチーフやクンダリーニ覚醒の象徴として描かれる立ち上がった蛇を思い出してしまった。それらはこのようなダイナミックな背骨の動きをもたらすエネルギーを象徴しているに違いない・・・。

第6式白鹤亮翅の同じ部分を前から見ると、師父は丹田を回している。https://youtu.be/FuTAYgQPX9A

 

 丹田を回すと背骨が龍のようにうねる。背骨をうならせているわけではない(背骨をうならせようとすると上半身に力が入って身体が硬くなる)。

 丹田の気が腰まで達して(”命門を開く”)帯脈一帯が丹田になれば丹田を回すと背骨が自然にうねる。猫が背骨をうならせようと思っていなくてもうねってしまうのと同じ?

 

 そして後ろ姿をもう一度みると、腰椎が上は頚椎、下は尾骨まで一直線につながっている。尾骨までつながると、股は自然に”円裆”になる。

 ”円裆”になると、足は自然に地面を”突っ張った”ようになる。

 足が地面を突っ張れると地面から反発力を得て背骨や腕が柔らかく動くようになる。腕を柔らかく動かそうと思わなくてもそうなってしまう。力を抜いて動かそう、と思っていると意識が力を抜きたい部分に行ってしまってかえって力が抜けなくなる・・・意識を丹田に置くのはそれを回避する方法でもある(とはいっても、意識はすぐに丹田から逃げてしまいます。それができるようになるには相当な修行が必要。)

 

  このような円を描く動作だけ見ても身体の開発度が分かります。

  師父がどれだけ腕を回しても頭や肩の高さが変わらない・・・身体にクッションがある。これが太極拳で作ろうとしている”柔”の身体。背骨が棒のように真っ直ぐなのは硬直した身体。背中を見ると歳が分かる。しなやかな背骨を維持するには丹田の気のクッションが必要なようだ。(クッションがない状態で背骨の棒を無理に曲げ伸ばししていると折れてしまう=痛めてしまうというイメージ)

2021/9/21

 

 しばらく劉師父の動画の編集をしていました。

 昨日師父に「えらく私の拳に似てきたなぁ。」と言われたのは、絶対師父の24式を何度も何度も見ていたせいだと思う・・・

 

 第1式から第5式、第6式から第10式は繋げて前後別々の動画に、第11式以降は大体3式づつを前後併せて一つの動画にしました。スローにしたり一時停止すると発見があります。

 見所、また書きます。

 https://youtube.com/playlist?list=PLFvVPgQrjXrbUpCq5TURHrloE_mKeHG1U

2021/9/16

 

 私が最近強く感じるのは、結局、息だ、ということ。

 気を溜める、気を通す、丹田を回す、発勁する、経を通す、などは皆、息なくしてはできない。太極拳の練習は息を全身隅々まで通す練習だ、といってもよいのでは?と思ったりする。

 

 逆に言えば、私たちは普段息を隅々まで通していない。私は24式をやっている途中で突然鼻が通って息が目の奥に入って視界が開けるようなことが度々あるけれど、裏返して言えば、普段は全くそんな状態ではない。息が通った時にそれまで通ってなかったことがわかる。

 

 息は私の課題でもあるけれど、最近一人で練習しているリップロール、これは上半身を放松させ、丹田を充実させるとてもお手軽な方法・・・と、昨日ビデオレッスンした生徒さんに早速紹介したばかり。うまくできれば上虚下実になる息の使い方が分かる。

 

 リップロールは子供の頃きっと誰もがやったことがある、唇を合わせてブルブルブルブル・・・・と撼わすもの。私はそれをボイストレーニングの動画で知って早速試してみたのだけど、最初は思ったようにうまくできなくて焦りました。歩きながら練習したりして、うまくできる時の状態を観察したら、おもしろい事実を発見したのでした。

 

 実は1ヶ月ほどのグループのレッスンで、レッスンの最後に皆にリップロールできますか?とやってもらったのだけど、案の定、私の年代に近い生徒さんたちはあまりうまくできない。が、一人30代前半の生徒さんがいたので、彼女にやってもらったらすんなりできる。ああ、なるほど、とその時、年齢とともに筋肉が硬くなるだけでなく息の幅が狭くなることも(ちょっと悲しいけど)確信したのでした。

 

  リップロールが長い時間持続するには、リップロールをする(息を吐く)前に、吸った息が鼻筋のてっぺん、目の高さ近くまで入り、それと同時に腹が膨らむような状態が必要になる(はず)。

  もし直前の息が鼻の穴の少し上あたりまでしか入っていなかったら、リップロールをしても数秒ももたないだろう。やってみると分かるが、鼻の穴程度の息の吸い方では腹まで息を入れることはできない。腹に息を溜められないと、そのあと、均等に長時間安定して吐き続けることはできない。

  私が参照した動画では、リップロールをする前に、良い香りを嗅ぐような吸い方をさせて鼻筋の上まで息をいれ、それから鼻からゆっくり息を出すエクササイズをさせていた。(下の動画のエクササイズ、個人的にはとてもおすすめです。)

 

 実は、上の動画の、思いっきり良い香りを嗅ぐような吸い方で息が届く場所、目の奥に近いところ、そこがほぼ上丹田。眉間の奥にある祖窍という場所だ。

 動画のエクササイズをして確信したのは、上丹田まで息を入れられれば下丹田(股関節の高さにある丹田、下半身(アパーナ気)を操る丹田)まで息が入る、ということだった。

 

 そこで、改めて馮老師のテキストにあるタントウ功の要領の記述を確認したら、やはり、タントウ功に入る前に棒立ち状態で、まずは遠くを見てそこから意念で気を祖窍のツボに引き入れ、そこから意を丹田の方に下ろしていく、とあった。

 最初に祖窍(上丹田)に気を引き入れる、これは、目の引き込みをしながら息を祖窍まで吸い入れる、ということだろう。遠くを見た目を次第に内側に引き込んで行く時は自然に吸う息になるはずだ。そこから釣り糸を垂らすように丹田に向けて意を下ろしていく。この時は吐く息になるはず。丹田に意を下ろしても、てっぺんの祖窍を失ってはいけない。だから”釣り糸を垂らすように”と形容される。

 

 なぜ、この上丹田の形成、維持が必要なのか、というと、ここを失って中腰姿勢になると一気にドスンとお尻や太ももに乗っかってしまうからだ。股関節、ひいては足裏までストンと重さが抜けるような立ち方は上丹田なしにはできない。

 

 ここで先日紹介した『骨盤力』でのタントウ功の姿勢にはいるまでの準備のインストラクションが興味深い。

 

  一番最初のステップが呼吸だったが、その時に少し上を向かせて息を吸わせていた。ボイトレの動画でも、良い香りを嗅ぐ時は少し上を見るようになっていた・・・というよりも、私たちが良い香りをめいいっぱい嗅ごうとしたら、自然に顔は上向きになる。でないと脳から胸いっぱいに香りは広がらない。(逆に言うと、臭いところを通る時は顎を引いて俯き加減、脳や胸に臭いが入らないようにする。)

 そして、息を上丹田まで入れた上で、できるだけ細く長く息を吐かせていた。この時、顔は上向きから正面になる。30秒も吐き続ければ下丹田まで息を吐けるはず。この息を反復させて、次第に上丹田と下丹田を息で連動させる。

次にステップ2で身体をトントンさせて芯を作り、その後でいざ、中腰姿勢!、ストン、と腰を落とす。するとちゃんと股関節に乗れるようになっている→左のgif画像参照。

 

 つまり、手塚氏が言っているのは、息が上丹田から下丹田までちゃんと繋がって入れば馬歩も自然にできてしまう、ということだ。変に高すぎたり、低すぎたりせず、ここ、という場所に落ち着くということ。

 

  タントウ功も同じで、最初に上丹田に息を引き込んで(吸い込んで)、そこから下の丹田に向かって釣り糸を垂らして上丹田ー下丹田間を息でつなぐことができれば、負担のかからない中腰指定ができるだろう。

  ただ、太極拳の難点は、顔を上に向けて立つことができないから、初心者のうちは上丹田に息を入れることが難しく、ただ腹の丹田への一点集中になるだろうということ。吸うよりも吐いて丹田を作るところから始めることになると思う。十分吐けるようになると吸えるようになる、というのも事実だから、まずは上丹田は無視して吐いて下の丹田をしっかりさせる、というのも間違えではない(私もその順番で学んだ)。

  ある程度練習して丹田がしっかりしてきたら、吸う練習もするべきだと思う。

  リップロールしながらタントウ功をすると、息を吐いても上丹田を失わない、という感覚、上虚下実の感覚が分かると思う。(要領を掴んだらリップロールをやめればいい。)

 

試論ですが、左は吸う息と吐く息との関係。

 

上丹田まで吸えれば下丹田まで息が入る。

上丹田まで吸いこんだつもりでも下丹田(下っ腹)が膨らまないとしたら、左のオレンジの線あたりまでしか息が吸えていないと思う。上丹田は脳の入り口。脳の入り口を突破するととたん脳が広がる感じがする。広がれば脳が軽くなる。脳が放松する。

 

目のあたりまで吸えると(オレンジ線)、腹(オレンジ線)が膨らむだろう。

普段は緑線の範囲でしか息を吸っていない可能性が高い。

 

呼吸はどこでも練習できるから、いろいろはってみたいと思っています。

 

<番外>上のボイトレの先生もそうだけど、喉の開いた通った声の出す人は吸いながら吐いているような顔をしている・・・吸気筋を使いながら吐いている(発声している)、と聞いたことがあったなぁ。 と思いながら検索していたら、フランスのシャンソン歌手、ミレイユ マチューに当たってしまった。しばし聞き入る・・・節節貫通、の声。

2021/9/15

 

  昨日習った技は、白鹤亮翅(24式の第6式)、閃通背(24式の第19式)、高探馬(48式の第38式)、倒巻肱(24式の第16式)など。

 どれも手の使い方は似ている(ある意味ワンパターン)なのだけど、決定的に違うのは足の使い方。足をどこに差し込むのか、どう引っ掛けるのか、ここに迷うと技が”巧”にならない。

  下の動画は上の技にほぼ共通する手の使い方で相手を投げる方法。

  足を引っ掛けなくても技になるけれど、私が師父を投げたかったら、やはり足を引っ掛けないと無理なのが見て分かる。

  下は閃通背、そして高探馬。 高探馬がこんなにえぐいとは套路だけでは分からなかった。 「太極拳の妙は足技にあり」、「師は弟子に歩法を教えず」などという言い方が分かる気がしました。

2021/9/14

 

  帰国までに師父の示範動画を撮ってアーカイブを作っておこう、と決めてから隙間時間にこまめに撮影をしている。

 24式の分割動画は全部撮り終わり、昨日は48式に入った。

 

 24式分割 再生リスト

 →https://youtube.com/playlist?list=PLFvVPgQrjXrbUpCq5TURHrloE_mKeHG1U

 

 48式分割 再生リスト

https://youtube.com/playlist?list=PLFvVPgQrjXrYp76qal07L9Y1abwI_02iY

 

 分割動画は1つ1分以内にしてYouTubeのショート動画にしてみた。ショート動画だと色付き字幕が簡単につけられてちょっと楽しい感じ♪

 

  今日は小雨が降っていたので木の下で推手を練習。簡単な技、と言って、白鹤亮翅、高探马 、倒卷肱を立て続けにかけられた。この3つ、両手の使い方はほぼ同じなのだけど、足の入れ方、引っ掛け方が違う・・・というのはすぐ頭でも理解できたのだけど、何がどうなっているのか何度かけられても分からない。師父は何度も「とても簡単だ」というが、確かに簡単そうにやるけれど、やってみろ、と言われるとどのタイミングでどうするのか最初は頭が真っ白になる。

  頭が真っ白・・・いやぼやけて灰色かなぁ。一瞬何がなんだか分からなくなる感じ、脳の回路がどうしてよいかわからなくなっている感じ、は後々思い出すと面白い。シナプスがどう繋がってよいか分からない、けど、どこかに繋ごうとしている・・・なんか脳に良さそう♪ なんて思ってしまった。

  すぐにできてしまうことばかりやっていたら脳活にならない。熟練になると考えなくてもできるようになってしまう。習得する前の試行錯誤する時が脳にはとても良いのではないかなぁ。

 

  と言っても、やはり早くできるようになりたい・・・ 

  最近の推手の練習で教わったのは、まず身体を相手の中に入れ込むこと。

  “进一步”(一歩進んで入る)

  怖がらずに入り込む

  防御もまずは入り込む。逃げない。

 

  下の動画は白鹤亮翅をゆっくりやって教えてもらっている光景だが、それを見ると、私は足をいつ差し込むのか考えて苦労している・・・これに対し師父は、確かに”足を差し込む”とは言っているしそうしているけれど、実際には、足よりも身体が先に前に入り込んでいる。身体が入るから足が進む。私は、足だけ差し込んで身体が後から付いてきている。

  なるほど〜 と、動画を見て気づいたのでした。

 

  動画見て思い出したのは、片方の足を一歩出して続けてもう一方が前に出る、この両足の動きは“跟步”。

      跟步はこうやって実際の技の中で見ると、とても自然で合理的。後ろ足が半歩前に出た時に突き飛ばしてるのが分かる。第六式白鹤亮翅に跟步があること、見落としてたのに気づきました。そして跟步の意義も一目瞭然、

  (跟步について文章で説明するととても難解。https://plaza.rakuten.co.jp/taijiquan/diary/201708200000/步  

https://ameblo.jp/xich/entry-12163509326.html)

  

 

  この手のものは何度もやって身体が覚えるしかない、というのだけど、それでも10回である程度コツを掴んでしまう人もいれば、100回やってもコツを掴めない人もいるだろう。私はコツが掴めない人がどうしてコツを掴めないのか考えるのが好きなので、今回は自分の動画を見て自分自身に対するアドバイスを考えました・・・師父はそこまで親切には教えてくれない・・・昔はただ投げ飛ばされて、あとは自分で考えろ、と言われたらしいからこんなにスローで示範してくれるだけでも有難いと思わなきゃならない。付き合ってくれる師父に感謝(すべき)です。

2021/9/9 <骨盤の三分割で胯が現れる>

 

 今日練習に行ったら、既に師父とフランス人の生徒さんが動功をしていた。

 後ろから見たら、なるほど、あのクオメソッドのいう”骨盤の3分割”、師父はそんな風になるように動いているけれど、生徒さんは骨盤がまるごと一個の石のままだ。

 太極拳では仙腸関節をどうしろ、とか骨盤を3分割しろ、とは言わないけれど、”胯を回せ!”と言うことがそういうことになっている。

 発勁には腰と胯の発勁が中心的役割を果たすから、太極拳では特に”骨盤力”が必要になるのだと思う。

なお、昨日紹介したクアメソッドの動画では④が骨盤の三分割のためのエクササイズだった。

 

  上の動画では紐やバーに捕まって仙腸関節に体重をかけてそこを引き離すような動きをさせている。

  師父が教えてくれている動功も目的は同じなのだけど、何も持たずにやるからなかなかその部分に圧をかけられないかもしれない・・・(フランス人の生徒さんたちを見ているとほとんど誰もできていない。師父は、練習時間がまだまだ短いから仕方ない、と多くは語らず。)

 

  その後、師父がやっていた動功を撮影しました。

  いつもこんな風な、ゆるいぐるぐる回しをしている。左右交互の立円(双手揉球)、平円(帯脈磨盤)、立円、そして左右の竪円(収腹功)、これら三方向の円は太極拳の基本中の基本だが、そのなかでも左右交互の立円は仙腸関節を引き離したり、その後、胯を手までつなげるような効果がある。師父が最も念入りに時間をかけて毎日やっているのは、左右交互の立円・・・打撃の多くはこの円の力の使い方・・・三換掌、掩手肱捶・・・前後の弓歩での技の多くがこれだ。

 

  師父の動功を見て”すごい!”なんて思う人は滅多にいない。格好良くもないし地味だ。けど、真似してやってみると、そんな風にはなかなかできない。節節貫通しないと師父のようには動けないが、逆に、節節貫通をしたかったらこんな風な動功が必要だ。ただタントウ功だけでは勁の力が弱すぎて全身の詰まりを突破できない。タントウ功で息を腹底まで落とせるようになったら腹底の息を失わないように(丹田を失わないように)動功をして腹から遠い部分まで勁を通せるようにする。仙腸関節を開くのも節節貫通の一つだが、それにも息のパワーが必要。

 

 私の生徒さんが最近やっと骨盤まで息が入るようになったと喜んでいました。

 その生徒さんは、「骨盤といっても、腹側に息を入れるのはそれほど難しくない、けれども、仙骨側に入れるには相当吐き込まなければならない・・・そして仙骨側に息が入ると、仙骨が音を立てる、その時、やっと骨盤全体に息が入ったのだとわかります。」そう私に話してくれました。

 「クアメソッドの①番目の動画で、骨盤に息を入れる、とあるけれど、果たして直立のまま仙骨まで息が届くのか? 私の場合は、先にタントウ功の姿勢をとらないとそこまで息は届きません。」と同じ生徒さんがコメントをくれたけど、私も全くその通りだと思いました。直立で息を仙骨まで吐き込めるなら話はとても簡単なのだけど、そのためにはそれなりの修練が必要かと。

 

 太極拳は息が通らないと始まらない。息が通ってしまえばその後はとても簡単になる。

 問題はどうやって息を通すのか? 

 

 息は体内では気として機能する。気の概念は広範囲に及ぶけれど、太極拳の勁、インナーパワーを作り出す”気”=エネルギー、は息ではないかと思う。強い息、深い息、息の溜め、このあたりがパワーとなって現れるように思う今日この頃・・・ 息が弱い人、声がか弱い人、は一般的にはパワーが少なくか弱く見える。

 仙腸関節も息で開ける。けど、息だけではなかなか開かないので、動いて身体をポンプにして息をそこに当てていく・・・これが太極拳の動功。息をよ〜く内側で追う作業(内視)が必要で、ただやみくもに身体を動かせばよいというものではない。(このあたりが普通のアスリートの練習との違いだと思います。)

 

  ↓師父の動功です。

2021/9/8 <筋力に頼らない骨盤力の動画から学ぶこと>

 

  昨日のクオ・メソッド理論の内容をもう少し知りたいと思って調べていたら、考案者の手塚一史氏の著書の基本内容がある程度youtubeで見られることを知りました。

  

 『MAG MOOK 筋トレでは身体の筋肉の9割は使えてません。骨盤力で疲れない身体になる!』 

  短い動画が1〜7までありました。

  

  1は呼吸、息を腹、骨盤、足裏まで通す、

  2は踵トントンで身体の芯を通す

  3は”抜き” カクッと脱力  

  (→ここでタントウ功の形になる)

  そして

  4で骨盤3分割のエクササイズ (3のタントウ功の形で骨盤がストレッチされているのを前提、仙腸関節を動かして、左腸骨 仙骨 右腸骨、を引き離す)

  5 サークルスクラッチ

    骨盤から肘までをつなげるエクササイズ (=太極拳の”肱”の使い方の練習)

  6 エアツイスト (腰 胯の回転練習)

  7 リフレックス プロペラ (腰 胯の回転が膝、足首、つま先まで連動=下肢の回旋練習)

 

  やはり、ここでもタントウ功の要領をクリアしてからのエクササイズでした。

  そして、そう言われて気づいたのは、タントウ功の形をとる前にまずは①呼吸を通してそれから②芯を通すということ。

  もし①と②をせずにいきなり③のように中腰姿勢(タントウ功の姿勢)になったら前太ももや膝に力が乗ってしまう可能性は大だ・・・・たしかに。

  しかし、私たちの年代の場合、①で呼吸を通す時に、即座に骨盤まで息を通せる人なかなかいないのではないのかなぁ? 腰を下ろさないと息が骨盤、そして足裏まで通せないから先に③の姿勢をとらせている、というのがタントウ功の考え方かもしれません。若い人の場合は直立姿勢でも通る可能性がある。その場合は上のメソッドの順番で一気に進めそうです。

  ①の呼吸で上から下向きに息を通して、その次の②の”芯を通す”は地面からの反発力を得て頭頂へ、という下から上向きへの勁の通し方。

  ①、②がちゃんとできれば、その先の③、そしてその姿勢を前提にした④以下のエクササイズはやりやすくなると思う。

  

  要は、③の脱力、タントウ功の姿勢がうまくできれば、④から先のエクササイズがとても効率的にできる。逆に言えば、③がちゃんとできていなくて前太ももに力がかかっていたりするとそれから先のエクササイズが効かない(うまくできない)。

  ④以下のエクササイズは太極拳の円形の動功と本質的には同じ。身体を割って繋げる狙いがある。

  ③が完璧にできていなくても、④以下のエクササイズを頑張っているうちに③の要領もつかめるようになる可能性もあるかなぁ、とも思う。そうしたら、遡って、②や①の意義も再認識するのかも。

 

  筋力を極力使わずに身体を使う、ということを提唱している人たちのメソッドには常に共通した部分がある。太極拳を学んでいるとそれがよく分かる。 

  

2021/9/7 <胯の回転の理解 弓状線>

 

  胯の回転についてメモ。

  胯はどこ? と改めて師父に尋ねたら、骨盤から仙骨を除いた部分、ということだった。仙骨は背骨を構成するから胯ではない。

  胯にも内、外、前、後、がある。これらを連動して回せると、”回転”する。

  外側が回っても後ろが回っていなかったり内側が回っていないと、胯全体としてはぐるりと回っていない・・・というのを自分の動画を見て確認したばかり。

  生徒さんに伝えるにしてもはっきりイメージしにくいかなぁ?

 

  そう思っていたら、骨盤の2つのアーチのうち上側のアーチが腸骨の弓状線で構成されるということを知り、その先に、まさに”胯”の回転を使った身体の操作方法(クオ・メソッド)があるのを知りました。

  左はその紹介動画で使われている骨盤模型。仙骨抜き。

  これが”胯”。

 

  右胯に、内、外、前、後ろ、の大体の位置を示しました。

 

 

 私自身は、”胯”を回せといつも師父に言われてきたけれどなかなかOKサインの出ないままなあなあになっていました。いまいち師父が要求している感覚が分からない・・・が、最近掩手肱捶の練習で胯の使い方を教えてもらっていたら、偶然的に胯をゆるゆるにしてくるくる回す、ということができてしまった。師父が大絶賛するのを見て、師父がこの2年間私にさせてきた不思議な動功の意味がやっと理解できたのでした。緩んで自由自在に回る胯、そしてその胯の回転の力が直接手まで繋がる、それが目標だった。

  これまで聞いたことのなかったクオ理論、骨盤の弓状線を意識的に使うという理論のようだけど、この紹介動画を見ておおいにに納得。というのは、私が胯の回転ができるようになったのは内胯、前胯に意識を置いたまま外胯や後胯まで回せるようになった時だった、すなわち、紹介動画で説明している『弓状線』近辺を意識的に動かせるようになった時だったから。それ以前は、外胯や後胯(お尻?)を一生懸命回していました・・・

  クオ・メソッド理論の全貌を知らないので、どうやって弓状線を意識的に動かせるようになるのかそのトレーニング方法はわかりませんが、太極拳の中なら全体を回しつつも会陰を引き上げて中心軸を逃さないようにする(下丹田を維持する)ことで弓状線近辺に意識が行くのだと思います。

  クオ・メソッド理論の紹介動画↓

   家にある高岡氏の『キレッキレの股関節』。

 表紙の図を見たら、あれ?これは胯の回転ではないか?

 と今更ながら気づいたのでした。

 

 たしかに、この左右の部分がゆるゆるになってくるくる回れば、キレッキレに使える。

 

 股関節に対する目標はみな同じ。

 そこに到達する方法論は違うかもしれないけれど。

 

 私が知っているのは、やはりまずは”松”。表層の大きな筋肉の力を抜いて奥の方の筋肉が心地よく動く感じがつかめると(筋肉が層状になっているのを実感できるようになると)、うまく動くようになる。身体の内側、さらに内側を見るような練習が必要だ。

2021/9/6

 

 積極的に師父の動画を撮っています・・・

 先日第13式青龍出水をチェックしてもらった時に胯の使い方を細かく指導されました。

 最初の3回は胯の捻り(腰劲 胯劲)。最後に捻りながらお尻に坐って裆劲を加味するところが特に難しい。 師父が示範している動画と私が直されている動画があります。

 が、その後、胯の回転の要領が分かったら、青龍出水の胯勁、裆劲が出せるようになってきました。胯をかなり大胆に回す必要がある・・・日本人にはかなりハードルが高いかも(サンバをやるくらいの意気込みが必要?)

 

 こんな感じで24式を見直して、そのうち48式、46式とやっしまいたいと計画中。

 

 24式の師父の分割動画はYouTubeチャンネルの再生リストにまとめていきます。

(今日までに第6式から第16式までと第22式から第24式まで撮影しました。)

 形を真似して一緒に動いてみるとよいと思います(リピート再生が可能なはず)。

 →https://youtube.com/playlist?list=PLFvVPgQrjXrbUpCq5TURHrloE_mKeHG1U

 

 その他、24式の資料動画、用法説明動画も再生リストも作成中。参照してください。

 

 24式練習用資料

https://youtube.com/playlist?list=PLFvVPgQrjXrbJI1Gk87YwoCS9LxAfcl7n

 

 24式 用法説明

https://youtube.com/playlist?list=PLFvVPgQrjXraFQVK15XldyQmv1oatTCl9

 

 

2021/9/5 <胯の回転 有為から無為へ>

 

  股関節の位置を見直し(思っていたよりも内側)、発勁の時の師父の胯の使い方を近くで観察して真似しているうちに、次第に胯の回転がどういうものか分かるようになってきたよう。先日初めて師父からOKサインが出たので、今日は一人でその復習・・・胯が回転するといろいろなことが可能になります。

 (お遊び感覚でショート動画にしました。)

  胯の要領は『松胯』。開胯ではない。松することによって胯は回転し胯の力(胯勁)が発揮できる。発勁の時は必ず腰と胯の力が必要になる。技によってはそれに加えて裆劲も必要になる。いずれにしろ、腰の回転と胯の回転は太極拳の要、だから、腰と股関節は人一倍よく動くようにしておく必要がある。

  

  馮老師が個人レッスンをしている光景を写した動画をあるが、その掩手肱捶の示範を見るとそれがとても明らかだ。生徒さんは空手経験者なのか、その打ち方はとても直線的。腰も股関節も固まっている。それに対し、馮老師の打ち方はぐるるん♪と回る。腰と胯のブルルン♪は印象的だ。https://youtu.be/rNP8s2wf2CA

左はチャンスー功の中のお尻の回転。胯を回転させるにはお尻も放松して回せるようにしておく必要がある。

 

いずれにしろ、うまく力を抜かないと回らない。一生懸命回しても回らない。

 

私の動画を見ると分かるが、胯がぐるりと本当に回っているのはほんの数回。あれは回していたのではなくて”回ってしまった”。回そうとしていると完璧には回らず、回ってしまって回ったと気づく・・・有為から無為を作り出す・・・これまた太極拳的。

2021/9/4 <重心移動 女性と男性の胯>

 

 現在の自分の重心移動を確認するために、第4式、第5式を師父に撮ってもらいました。

 師父曰く、細かい部分に多少改善の余地があるにしても重心移動はこれで良いらしい。

 自分で見ても10年前の単鞭の形より随分良くなっていると思う(この程度の変化のためにこんなに年月を費やさなければならなかったのか、とも思ったりもしますが、そんなものでしょう)。

 

かなり師父や馮老師に近づいた!と冗談で師父に言ったら、そうでなきゃ困る、と言われました。師父には全く冗談が通じない・・・(苦笑)

私がこの数年特に意識していたのは、両脚を広げても骨盤を広げないようにすること。

多くの女性の太極拳の老師の問題は股を開こうとして腸骨を開いて骨盤を歪めてしまったり、大腿骨骨頭を引っ張り出したように使ってしまって股関節を不安定にしたり膝を捻ってしまうことだと気づいた。

 

男性の骨盤は逆三角形でそこに付着する筋肉たちも太くて硬いから簡単には骨盤は開かない。けれども女性の体はすぐに開いてしまう。

 以前から師父に女性と男性では練習方法を変えるべきではないか、と言ってきたが、師父は練習の際の意識する点が異なるだけで練習方法は変わらない、と言っていた。それ以上具体的な話にはなかなかならなかったが、最近私が女性の骨盤の歪み、開きの問題を提示して初めて具体的に一つの口诀を教えてくれた。

 

 それは、『男性の骨盤は”撑开“、女性の骨盤は“裹“する』という言葉。

男性は骨盤の中を膨らませて内から外向きに広げるようにする。

 左の図のような感じになる。

 

 これは丹田の気で骨盤を膨らませるようにするのと同じだから、太極拳的にとても分かりやすい。

 

 注意が必要なのは女性。

 男性と同じように腹に気を溜めて骨盤を広げようという意識よりも、骨盤を外側から包む意識が大事。

← “裹“(guo)のイメージ?

 

 そう言われれば、骨盤ベルトというのも骨盤を“裹“するためのものだ。こうすると女性の骨盤は安定する。

 

 普段座っている時も女性は骨盤を“裹“しておくべき。以前の私のように、師父と並んで堂々と股を開いて座っている・・・なんてことのないように。内腿はしっかり合わせておけるようにする。本来の日本女性の慎まやかな美しい所作が鍛錬として必要だったのか? とこんな歳になって初めて思うが、なにごともバランス。閉じたら開く、開いたら閉じる。男性は閉じるよりも開く、女性は開くよりも閉じる、に多少意識を多く持つ。

  太極は対極的なものを併せ含むもの。閉じ気味の男性の身体の場合は、合よりも開を多く意識することでバランスが保てる。開き気味の女性の身体の場合は、開よりも合を多く意識することでバランスが保てる。そして、個人差というのもあるし、季節による身体の違い、年齢的な差異、その時の身体の状態、と細かな調整もある。杓子定規でいかないのが太極拳の練習だ。

 

 冒頭の私の10年前の单鞭の重心移動は左右の股関節の距離が広がり過ぎていて园裆ではなく平裆になっている。骨盤の上のアーチはあっても恥骨のアーチがない。恥骨に力が入らない(恥骨で股関節を引っ張れない、合できない)状態。全体的に気が上→下の一方向なのはそのせい。ただ、練習の段階として、まずは上→下、身体の気を足裏まで落とす、というのが大事だから、10年前はそれができるようになった段階だった、といえると思う。これができるようになったら、足裏から反発力を得て腕の方まで気が自然に流れるようにしていくようになる。この第二段階、下→上、の時に、恥骨の合が必要になってくる。女性の身体が下がって重くなってしまうのは、構造上恥骨の合が難しいからかもしれない。身体の中心にキュッとした求心力が必要になってくる。この第二段階では48式や46式などで積極的に跳んだり跳ねたりした方がよいかもしれない(ジャンプしようとすると嫌でも恥骨を合させないとならない)。

 

 師父の股関節の回転を間近でジッとみてそれを真似して動かすととてもスルスルとうまくいく・・・一人でやるとともすると無意識的に股関節を実際よりも外側だと勘違いしているのが分かる。 脳を躾けることで正しい動きができるようになるようです。

2021/9/3

 

 园裆・松胯と『力は踵から』について資料を集めていたので下に画像を仮置きします。

 骨盤が”橋のアーチ”の役割を果たしているか、に注目しようと思いました。

2つの 

骨盤の2つのアーチ

赤を後方アーチ、青を前方アーチ、というらしい・・・

→https://physio-fukuoka.jp/startle/archives/6288

簡単に言えば

<赤アーチは胴体の重さを下向きに流す 上→下>

<青アーチが床からの反発力を得る 下→上>

 

この2つのアーチが揃っているか否か・・・それを見てみようと見ていたら、それに付随して気づくことがいろいろありました。

 中心軸がブレてゆさゆさしていると骨盤の2つのアーチはうまく機能しなさそう、とか、ゆさゆさしていたり、動きに酔ってしまうと頭頂に領勁がなくなりアーチの働きも弱まってしまう(踵から力が発しない)。女性は股を開くと恥骨の力が消えてしまい青アーチが間伸びして弱くなる傾向がありそう(私もその一人)。円裆を通り越して平裆になってしまう? (女性の場合、股を開いた時に、実際の股関節の位置よりも開いて使ってしまうことが多い。)

 

 いろいろ比べて見てみるのも勉強になります・・・

 良いお手本を見て真似する、イメージを掴んでおくのは大事だと思います。

 

<混元太極拳の単鞭>

<陳式規定套路>

2021/9/2

 

 帰国の前に24式、48式、46式のライブラリーを作ってしまおうと思い立ち、師父にお願いして毎日動画を撮っています。

 今回2年間パリで師父と一緒に練習して感じたのは、どんなに練習しても師父のような武人にはなれないということ。もはや中国でも武人と呼べる人はほとんどいない。武人はそもそも自分で自分を宣伝しようと思わないし、文を書いて説明しようとはしない。私は師父からできるだけ学んでその学んだことを伝えられるようになれればよいと思う。

 

 何を学ぶにしても、良いものをお手本にするのが一番。

 師父の所作は癖がなく美しい。師父に会った人は皆同じような感銘を受ける。

 

 24式の分解動画は、第6式から第10式(第6式から第8式、第9式から第10式、と2つに分けたものもあります)、第11式から第13式、そして第22式から第24式、を撮りました。

 

 混元太極拳の超入門編は第1式から第10式、そのあとに第22式から第24式、計13式です。北京の本部ではそのような教え方をしていました。

 それができたら、24式、そして48式。これで一路は終わりです。

 一路を学んだら、二路(炮锤)の46式を学びます。

 太極拳は是非とも二路まで学ぶべき。一路は二路のための準備です。二路を学ぶことで一路の意味が分かってきます。もし一路を学ばずに直接二路を学んだら・・・少林拳や長拳などの外家拳と変わらなくなってしまう?

  私は帰国したらできるだけ早く46式を教え始めたいと思っています。

  帰国までの2ヶ月間の間に、24式と48式、46式のライブラリーを作れば生徒さんたちも少しは自習ができるかもしれない・・・

 

  併せて師父にはそれぞれの式の用法解説をお願いしました。技の説明になると途端勢いに乗ってくる師父。私は技についてはど素人ですが、学ぶために頭の中でいろんなことがつながってきます。とても面白い!

  今日までに、第7式から第13式、そして第22式の用法解説の動画を撮りました。

  字幕をつけていないので分かり辛いところもあるかもしれませんが、興味があれば見てください。

  動画はいずれもYouTubeのスタディタイチ チャンネルにアップしています。

  https://www.youtube.com/channel/UCd33e9RvjU7zewNMYayZ0YA/playlists

動画適宜アップ中! 

YouTubeチャンネル『スタディタイチ』→こちら

『今日のメモ』毎日の練習は気づきの宝庫。太極拳の練習の成果が何に及ぶかは予測不可能。2012年9月〜のアーカイブは『練習メモアーカイブ』へ

⭐️どのレッスンも単発参加OKです。お問い合わせへ

練習のバイブル本

 『陳式太極拳入門』

   馮志強老師著

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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

発表の抄録、資料はこちら