2023/12/28
口で吐くといっても、口から息を吐き出すわけではない。
鼻から腹まで吸った息を、さらに腹底へと吐きこむようにすることを言っている。
しかし、しっかり腹から吸えないと、うまく吐きこむことはできない。
しっかり腹から吸うということは、鼻腔をしっかり使って息を吸っているということだ。
息を吸って腹が膨らむ時、目の奥がすっきりするのに気づくと思う。眉間は鼻の根っこと呼ばれるが、鼻の根っこまで使うと目が内側から開き覚醒する。
練習の途中で急にそれまで気づかなかった草木の香りに気づき、視力が良くなったようになることがあるが、それは、息がちゃんと吸えるようになったからだ。普段の慌ただしい生活や人混み、車道の脇を歩く時などは、無意識で息を吸うのを控えているのが分かる。息が吸えた時、それまで吸えていなかったことが分かる。それは、放松した時に、それまで放松していなかったことに気づくのと同じだ。吸えていない時、放松できていない時は、できていないことに気づかない。できて初めてできていないことに気づく・・・
今日スマナサーラ長老の動画を見ていたら、鼻炎のため瞑想がし辛いという人の質問への回答の中で、鼻で呼吸することがなぜ大事なのか、そして鼻で呼吸することができない人の訓練法が説かれていた。
なんてタイムリー!とドキドキしながら聴いていた。長老、どんなことを言うんだろう〜?
鼻が悪いと口で呼吸してしまう。 それを10分、20分やっただけでものすごくダメージがある、と長老。鼻腔のフィルターを通さずに外界の空気を吸ってしまうダメージは想像以上のようだ。
副鼻腔炎とかになってしまうと、集中力も落ちそうだ。
そして、ここでスマナサーラ長老。息を吸う訓練方法を伝授してくれました。
やっぱり鍛えなければならない!
ここからは動画を参照してください。
質問は7分30秒あたりから。
(自分で恥ずかしく思うのですが、お腹の膨らみ縮みが分かりにくいです。以前、長老が、パティパダーでお腹の膨らみ縮みが分からない場合、無知が強いというようなお話をされていたので、何とか感覚を捉えようと集中するのですが、微妙にしか感じません。私は慢性の鼻炎のため、鼻で呼吸がしにくく、口で呼吸をする時間が長いです。そういう訳で、このような状態でも、お腹の膨らみ縮みが分かるようになるにはどうすればよろしいでしょうか?)
訓練法は13分あたりから教えてくれています。
実は私も同様の呼吸法を一時期、タントウ功の時にやるようにと劉師父に言われてやっていたことがある・・・・ヨガも気功法もそして仏道の修行法も交わるところが多いです。
息は生命力なので、意識的に鍛えるのも良いと思います。
息の仕方を変えてもらったら、腿裏が伸びるようになった、という生徒さんもいます。最終的には指先、末端まで”息”を通すようにします。まずは、鼻と腹をつなぐこと。
2023/12/25 <放松と呼吸 そして丹田>
前回はリップロールを紹介したが、それは横隔膜を下げたまま息を吐き続ける練習になる。逆に言えば、横隔膜を下げたまま息を吐き続けられない人はリップロールを長く続けられないだろう。
そして、何と言っても大事なのは脱力=放松!
「太極拳は松に始まり松に終わる」と言ったのは馬虹老師。
推手でも、「谁松谁赢 」(松したものが勝つ)と言われる。
実際、達人と言う人は緊張していない。
が、<放松>は言われてもなかなかできない。頭では分かっているのにできない。
「緊張するな!」と言われて、すぐにリラックスできるのは、「寝なさい」と言われて即寝てしまえるようなもの。交感神経と副交感神経を自分で簡単に切り替えられる人はものすごいヨギー、達人だろう。
神経は自分の意思でコントロールできない。<神>の領域のもの。精神病などの神経疾患を治療する中医はかつて「神医」と呼ばれて、その他の医者よりも格上とされていたという。
通常、私達が神経を調える時は呼吸を使う。
呼吸をゆっくり深くすれば副交感神経が優位になる。リラックスする。
速く浅くすれば交感神経が優位になる。興奮、緊張する。
つまり、放松にはゆっくりした深い息が必要だ。
そしてさらに言えば、ふっくりした深い息には、そうなるような身体の姿勢、あるいは、身体の使い方、そして正しい重心が必要だ。
姿勢が悪ければ息は深くはいらないし、肋骨がガチガチで動かなければ横隔膜も動かないだろう。そして重心が前面にあったり胸にあるとこれまた深い息はできない。
ざっくりまとめれば、
<放松>のために<正しい呼吸>が必要で、そのために<正しい身体の組み立て方>が必要だ。
これを気功法では、「調心」「調息」「調身」と3つにまとめている。
「調心」で心を鎮め、「調息」で長く深い息を心掛ける。
これらは日常生活の中で意識すればいつでもどこでも練習できる。
ん? と、今立ち止まって、今の私の息はどうなっているのかチェックする。
全然深くない!と気づいたら、意識して深い息に変える。
そうすると放松し始めるだろう。
「調身」は太極拳の練習で誰もがやっていること。
が、姿勢や動き方、重心のとり方は、ただテキストやお手本を真似するだけでは足りない。それが、常に深い息と強張りのない心に資している必要がある。
放松しているようで、実は浅い息だということもある。その場合は「偽松」だと言ったりする。雰囲気だけの放松だ。心の中、体の中から放松していない。
そして丹田は、放松と深い息(調心と調息)を同時にクリアさせるための一つの手段だ。
太極拳で常に丹田を見守り回転させるのは、内側に意識を置いて放松状態を維持し、かつ、深い息を持続させるためだ。意が外に向くと丹田は消えてしまうし、息が腹に届かなければ丹田は消えてしまう。放松と深い息を同時にクリアさせるための一つの方法だ。
2023/12/24 <功夫 呼吸>
功夫というのは長い時間をかけて養うもの。
一流のサッカー選手がボールを蹴るのを見て感激する時、私達が鑑賞しているのはその域に達するまでに費やした個々プレーヤーの努力の積み重ね。私がボールを蹴ったところで誰も感動しない。
太極拳で最も大事なのは功夫。
技術のベースには功夫がある。
24式などの套路だけを練習しても通常功夫はつかないが、功夫のある人は套路を使って功夫を維持することは可能。が、多くの功夫のあるマスター達は、秘密の練習(功法)に時間をかける。一般公開はしないのだ。
そんな功夫を培う上で非常に大事なのが呼吸だ。
呼吸が弱いと身体が弱い。
功法をやっているうちに呼吸が自然に深く長くなるのが自然の流れ。太極拳だと丹田に息を注ぎ込み続ける過程で自然に息は強くなる。
今週生徒さんにやらせてみた簡単なチェック方法がある。リップロールだ。
ただ唇をブルブル振るわせるだけ。
これを長い時間均等にやり続ける。
が、やらせてみると、プルプルが途切れてしまう人が思いの外多い。子供の頃はあんなに簡単だったのに...
でも、練習すれば甦る。
この時の腹、背中に向けての息の使い方は太極拳の"開"と同じだ。
腹底まで使うにはその前にそれなりに吸えていなければならない。それは"合"だ。
開合を単に両腕を開いたり閉じたりするなんて思っていたら大きな間違いだ。呼吸だ。
これができれば血液中の酸素濃度が上がり、ミトコンドリアでより多くのエネルギーを作り出すことができる。冷え性にはならないのだ。
寒がりの人は間違いなく呼吸が浅い。
自家発電できるような身体を作るのは大事な功夫だ。
これはまさに今、冬が最適!
室内練習よりも屋外が断然功夫が上がる。
温室育ちの植物は野生の植物には敵わない。強さが違う。
ということで、今週はリップロール以外にも呼吸法を練習してもらいました。
吸う方についてはまた書きます。
とりあえずリップロール❤️
2023/12/17 <内胯と両足の内側の合>
生徒さんから質問があったのでここで回答します。
質問は、
「レッスンで睾丸の両脇ライン(内胯)を伸ばして使う練習をしました(注:これは裆を前後にストレッチする練習。圆裆は股を前後左右にストレッチさせて作ります)。
練習を繰り返していたら、少し内胯の感覚がとれるようになったのですが、この感覚を使って片足立ちをすると、足首がしっかり立ちません。はっきり立っている!という感覚になれる足首はどう作るのでしょうか?』
<返信>
まずは、内胯の感覚が掴めるようになったのは大きな進歩。骨盤底筋は感覚がとり辛いので、内胯の二本のラインをしっかり意識できるようにした方がよいです。
2023/12/12 <主に腿裏、股関節屈曲の話>
夜のオンライングループレッスンの振り返り。
事前の質問は
①どうしたら丹田で股関節を回せるのか?
②お尻と腿裏の境目近辺が固まってしまっていて動かない。どうしたらよいか?
③陽陵泉を意識するにはまず胆経を意識できなければならないか? 動きながら意識し続けようとすると頭がぼうっとする・・・
今日のレッスン
①については、まず丹田を作れるようになるのが第一歩。
そのためには、腹まで息を入れられるようにすることが必須。
つまり、丹田を保つためには、そのような息が不可欠だということだ。
腹まで息が達するのを確かめて、吐いても吸っても、そしてそのうち、吐いているか吸っているのかよく分からなくても、ずっと腹に息が達している状態を保つ練習をする。
これがタントウ功の第一歩であり、中核だ。
立ち方の外形が正しく見えても、内側の息ができていなければ、その立ち方はただ筋肉を鍛えるだけになってしまう(し、本当には正しい立ち方にはならない)。
中核は息。
そしてその息の貯蔵場所が丹田、という感じになる。
それを躾けて、その上で、丹田を回す練習(内功)をしていくと、自然に股関節は動くようになる。
まずは丹田を作る。
それからそれを動かす(回す)練習をする。
すると、内側から腰が緩み、関節が緩み、背骨も緩む。
→②の解決方法もその延長線上にある。
緩まない部位を意識してそこをストレッチしようとすると、もともと伸ばされるのを嫌う性質のある筋肉は、抵抗して緊張してしまう。
ともあれ、生徒さんが、この部位が硬くてどうしようもない、と困っているのは良いことだ。
まずは、ここが硬くてどうにかしなければ、と思うようになることが大事。
それに気づかずにいる人の方が多いからだ。
股関節、腰、股ぐら、腿、膝、足・・・全てに影響が出る。
そして、ここを緩めるには、上のデ・クラーク選手のようなポーズを取ればよいのだが、これを椅子に座ってやらせているのが、腰の王子の「コマネチスリスリ」体操。
腿裏を伸ばす体操だが、言い方を変えると、しっかり股関節の屈曲をさせる体操だ。
ん?
そう、お尻が硬いと股関節屈曲が中途半端にしかできない。
股関節屈曲がしっかりできない=お尻が伸びない
→股関節の回転が阻害される 骨盤の前傾・後傾の運動に支障がでる
→ 立位、座位ともに自然に背骨が伸びない
腰の王子の「おはようおやすみ体操」では骨盤の後傾前傾を練習するが、その前提として、「スリスリ体操」で股関節の屈曲がしっかりできていないと、骨盤を立ち上げる(前傾=股関節伸展)ができない。
やはり、股関節屈曲を見直すべき。
しっかり屈曲ができているのか?
今日は、両足を閉じた姿勢から、腿裏を内旋しながら股を恥骨の方へ引っ張り出しながらしゃがむ練習をしてもらった。正しく屈曲すると足首まで連動する、というのがミソ。
その点でいつも頭に浮かぶのはホロヴィッツの姿。
股関節の屈曲が完璧だ。(腰の王子のコマネチスリスリが完璧にできそう!)
が、近年のピアニストは股関節屈曲がしっかりできていない場合が多々あり、もっぱら上半身だけで器用に弾いている感じが否めない。
上段の反田さんは音量が足りないため体重を増やした、という話をしていたが、音量は足りないのは骨盤を寝かせてしまう(丹田を失ってしまう)ためではないかと思う。足の力が使えないのが指が弱くなってしまう原因のはず。
中段の左はランラン。ピアノは無茶苦茶上手だが、やはり座り方に問題がある。しばらく腱鞘炎で休んでしまったのも理解できる。右のブルースもとても上手だが、やはりのめりこんで丹田を失いがち。今後歳をとっていくにつれさらに気が減ってしまう可能性がある。グレングールドのような方向に行くのかなぁ?
そして最後の角野さんは比較的きちんと座っているが、よく観ると、足に気が降りていない。それが微妙に背中が硬く見える理由。角野さんを見た後に改めて上の巨匠立ちの背中を見ると、真っ直ぐだけど緩んでいる感じがするのでは?そして、巨匠たちの鼻を見ると、息を吸っているような感じが強いが、角野さんをみると、息を堪えて止めてしまっている感じだ。このあたりの息遣いの違いが姿勢にも影響していると思う。息は鼠蹊部まで届かせる・・・
姿勢が少し崩れていてもピアノは上手に弾けるが、長い目でみるとやはり負担をかけてしまう。太極拳も同じ。
2023/12/9 <関節を回すとは? 股関節の回し方>
太極拳の練習では股関節に着目することが多いと思いますが、股関節を動かそうとするとほとんどの場合失敗します。
それはなぜか?
同じような話はこれまで何度もブログに書いてきたのだけど、それを別の視点から説明してみました。
一番の問題は、股関節を動かそうとした時に、無意識のうちに、股関節ではなく大腿骨骨頭を動かそうとしてしまうこと。
関節は二つの骨の接合点、ある意味、隙間。
接合点、隙間を動かそうとする時は、関節を構成する2つの骨の末端をそれぞれ動かすことになる。
が、私たちの身体意識は特に開発をしない限り、身体の末端部の方が強く、中心に向かうほど弱くなっている。
身体を動かす時も、狙った場所よりも末端を動かしてしまう傾向がある。
手首を回そうとして、手首より先だけ回していたり(前腕を回していない)、首を回す時に胸椎を回さずに頚椎だけ回していたり、肩を回すといって腕を回していたり・・・それはごく普通にやっていることだ。
太極拳や合気道など、小さな力で大きな効果を狙うようなものは、例外なく、中心部の身体意識を開発し、全身の連動をかけている。もちろん、それには、関節の動かし方を正しくおこなう必要がある。
股関節はトリッキーです。
特に太極拳では。
太極拳は、<頭と胴体はまっすぐで動かない>というイメージが強いかと思います。
しかし、実際は、まっすぐ(中正)を保つために、通常のスポーツ以上に背骨や関節を細かく動かさなければならない・・・
股関節を動かそうとして、大腿骨骨頭を動かしてしまうと、膝下にしか連動がかからず、胴体や腕は取り残されます。
股関節を動かす時は、骨盤から動かす必要がある・・・
そんな点について簡潔に結論だけを述べた動画を撮りました。参考にしてください。
いかに酸素を取り入れることが大事なのか、を論じています。
肺は酸素を取り入れられないし、二酸化炭素を吐き出さない。
では、酸素を取り入れる器官はどこか?
そんな考察から、肋骨の柔軟性、可動域を高める話になります。
昨日のブログとの関連で言えば、いつも俯いて息を吐いていれば肋骨は固まります。
正しい位置に立つことで肋骨も動きやすい位置に置かれる。
太極拳の時も、『束肋』と言われたりするのは、意識的にそうでもしなければ肺にいっぱい空気が入って肋骨の前面が上がりそうになるから。
私は昔、『束肋』は、肋骨を束ねたように固めた状態にすることかと思っていましたが、師父に尋ねたら、「それは肋骨が膨らむから束ねたように感じるのだ」と言われて、よく理解できなかったことがあります。
師父の言った意味が分かるまでに暫く時間がかかりましたが、かいつまんで言えば、丹田に気を落とす時は肋骨も拡がっている。胸に空気を"含んでいる"状態になる。あー、だから『含胸』なんだ、と理解を改めた覚えがあります。『含胸』は決して胸を凹ませることではない... けど、ちょっと凹ませないと空気が入らない、肋骨が拡がらない。そういうこと。
昨日載せた太極拳の老師達のうち、息を吸っているように見えた2人の老師は胸も緩やかに膨らんでいます。吐いているだけの老師は胸を張り出しているか、胸がぺたんこ、脇に 拡がりがありません。
正しい位置に立つには、頭を思っているよりもかなり後ろに引いて立つ必要がありますが、その位置で立つには肋骨が緩む必要があります。肋骨が弛まなければ後ろに倒れてしまいそうになるので、結局、その位置では立てません。
肋骨を緩めないと正しい位置に立てず、正しい位置に立たないと肋骨が拡がりにくい(注:この場合の肋骨とは前面の下部肋骨ではなく、前面上部と背面の肋骨です)。
息は背中側にたくさん入ります。