2024/2/27 <平櫛田中の鏡獅子 霊感と肉感>
夜、テレビをつけたら「なんでも鑑定団」で彫刻の鑑定をしていた。平櫛田中の作品か否か?という鑑定。
私は平櫛田中という彫刻家を知らなかったのだが、番組の中での紹介に見入ってしまった。すごい! というか、日本彫刻界の巨匠でした・・・
紹介の中で、大作「鏡獅子」について、それが六代目尾上菊五郎をモデルとして20年かけて制作されたものであると語られていたが、その時挙げられた菊五郎の写真に目が釘付け。太極拳? 右单鞭? しかも太極拳の大師のような風格・・・
上の姿から田中が制作した「鏡獅子 試作裸体」
あれ? 力んだ? という感じだ。
脚の開き方も変わってしまった。
死んでしまったかな?(固まってしまったかな?)
と、これら2枚の写真を師父に見せてコメントをもらった。
返信は
「一枚目は内側を見ている。霊感あり!」
「二枚目は外を見ている。肉感あり!」
「二者は同じ次元では語れない」
ここで師父が使った”霊感”という言葉は、日本語で使うオカルトちっくな意味ではなく、「活き活きとした感覚」だ。「霊」には、素早く動く、という意味がある。そしてこの『霊』は、太極拳が目指す最も上の境地だ。
すなわち、放松から始めて、開→沈→柔と進んで、その先に霊、素早さがある。
一枚目の菊五郎の写真を見ると、重さも柔らかさも素早さも感じることができるだろう。
これに対し二枚目は、重さがあるが、柔らかさと素早さが感じられなくなっているような気がする。
それはちょうど、前回載せた画像の比較と対応するのでは?
霊感と肉感
カンフー映画や武術漫画を見ると、肉感系が描かれていることが多く、それが格好良く見える。私も若い頃は肉感系が好みだった。霊感系のをみてもピンとこなかった(というよりも、それが目に入ったことがなかった)。
今の師父と出会い、一から太極拳をやり直して知ったのは、太極拳は究極の武術、霊感の武術だということだった。肉でやっているようでは力の世界、俗なのだ。どこか浮世離れしているのが太極拳、弱そうで強い、一般人には良くわからないものなのだ。
私が見るところ、現在広まっている太極拳はざっくり二種類ある。
一つは武術太極拳と称されているような肉感的な太極拳。カンフー映画に出てきそうなものだ。
もう一つは、霊感系を真似して力を抜いたような感じで動いている太極拳のような体操だ。こちらは体の中身がない。内側がない。強さがない。
肉感系の人が太極拳の門に入るには徹底的に筋肉を緩めることが必要だ。
体操系の人については、放松が内側の力=丹田の力につながるような練習が必要だ。
と、鏡獅子の話に戻ると、今、鏡獅子は故郷の岡山県の井原市に里帰り中だということでした・・・平櫛田中美術館、素晴らしい作品がいっぱいある・・・https://www.city.ibara.okayama.jp/denchu_museum/kubun/works/
2024/2/24 <女性の骨盤(腸骨)が開いてしまうわけ、提肛、坐骨を寄せる>
日本人の女性は股関節が内旋していて内股の人が多い。
着物を着た時の歩き方が残っているのか?と思ったりするのだが、外国人から見るととても特徴的に見えるらしい。私もしばらく外国にいて日本に戻ってくると日本人の歩き方が奇妙に映る。次第に慣れてはくるのだが・・・
今日はあることを考えながらレッスンに向かった。
途中で、私が思うところの典型的な日本女子の姿を発見。
<左画像>立った時に両足の踵が揃わず開いている。しかも左右の開に差。
→お尻が開き骨盤底筋が緩んでいる。内臓が下がる。
<右画像> この姿勢で歩くと、体の中心軸がなくなり、左⇄右と揺れながら歩くことになる。足首が曲がってしまっている。
この女性はまだ若かったが、この歩き方はすでに中高年だ。
後ろからバタバタと歩いてきたので思わず注意して見てしまった次第。
太極拳には『斂臀』という要領がある。
これはざっくり言えば、お尻を出さずに入れる、ということだが、入れ過ぎは禁物だ。
お尻にギュッと力はいれない。股関節が固まってしまう。
入れるのは、仙骨だ、と理解していたが・・・
ひょんなことから、目から鱗の要領を知った。
『左右の坐骨を近づける』
立位だとどこに坐骨があるか分かりづらいので、椅子に座って、自分で左右の坐骨を触り、それを寄せるようにして座り直してみる。
どうだろう? 何が変わるだろう?
下っ腹にギュッと力がみなぎるのが感じられるはず。
内股にも力が入るだろう。
お腹が引き上がった感もある。
これは骨盤が立った感じだ。
両足を広げても、坐骨は中央に引き寄せるようにしておくのが正しい。
すると円裆になる=股、骨盤底筋に力が出る。
弓歩で両足を広げた時に左右の坐骨まで広げてしまうと、気が漏れて内股がスカスカになる。代わりに外腿や前腿を使うことになる。足裏まで気は届かない。
↑https://youtu.be/rNP8s2wf2CA?si=Ffq2GTLbNkiccM36より
個人指導をする馮老師。
馮老師の坐骨は引き寄せられている。立ち姿には軸が通っている。
生徒さんのほうは全く無意識だ。
前から見ると二人の裆(股ぐら)の形が違うのが分かるだろう。
生徒さんは体が落ちて股ぐらが角ばっている。これは肛門が落ちている証拠。
『提肛』:肛門を引き上げると、両坐骨は近づく。股が引き上がって足長になる。両腿も近づく(O脚が緩和される)。
今日のレッスンでは、椅子に座って自分の坐骨を探し、それを寄せて座ってもらった。
会陰を引き上げたり、肛門を引き上げたりするとそうなるはずなのだが、実際にはそれだけでは坐骨が引き寄せられるほど引き上げられないと思う。坐骨にはハムストリングスが付着し、また、坐骨と仙骨の間にも筋肉がついている。坐骨が良い位置にあるとハムストリングスや仙骨が使いやすくなる。坐骨の位置が悪いと、股関節や膝に負担がかかる。
私が見るほとんどの太極拳の画像は肛門が落ちている。たまに引き上がっているものがあると嬉しくなる→下の左上画像の楊名時老師。その他の画像は全て落ちている。
体を固めると肛門に圧がかかり下がりやすい(痔になる方向に働く)。
肛門を引き上げるには体の中に空気をいれる必要がある(肛門を引き上げると体の中に空気がはいって浮くような感じになる)。→筋肉もりもりの太極拳イラストは❌ 上半身を締めるとアウト。肛門を引き上げられないし、坐骨も寄せられない。そもそも丹田ができません。
太極拳を女性が練習する時は、特に”下げない”ように意識しないと、腸骨が開いて股関節の安定性が減り、さまざまな影響が出てきます。昔は女性はみだりに股を開かない、とされていたのも一理あると思ったり。股を開く時は、必ず、その分もっと引き上げる。(実際、両足開脚の時は中心部はむちゃくちゃ引き上がっています。)
男性も提肛に注意。以前中国の生徒を見ていたら、「太極拳をやりこむと痔になる」というような投稿がいくつもあって驚いたことがある。きっと全身力を込めて練習していたに違いない・・・
2024/2/23
前回のメモで箇条書きで書いた①は②へと繋がる。
実は、私にとって②が大発見。
現在普及している太極拳がなぜおかしいのか、なぜ膝を壊すような動きになっているのか、いや、それは太極拳だけの話ではなく、なぜ歳をとると膝を壊したり股関節を痛める人が多いのか、その原因がはっきりしたからだ。
つまり、体重移動は「脛を立ててから乗り込む」ということ。
この「脛を立てて」というところがミソだ。
街で大人が歩いているのを見ると、膝下が立つ前に足に体重を乗せている。
しかし、身体が構造通りに動いている子供、そして体が崩れていない大人は、ちゃんと足から膝下が支えを作ってから体重を膝に乗せて歩いている。
大人は太ももを膝にかぶせるように歩いている人が多いが(前腿で歩いている)、脛を立ててから膝に乗ると、膝は開いたようになって体重が膝にかからないのだ。
この感覚を体験してもらうためには、足首の背屈から教えなければならない。
そもそも背屈が不十分な人が多いからだ。
背屈がしっかりできると、足首にロックがかかり足がとても安定する。
そして背屈がしっかりできた上で重心が移動していくと、足裏から膝下までが足で支えられるのだ。言い方を変えれば、膝下までが”足”になる。
こうなったら体は膝に乗り込むことができる。
膝に乗り込んで大丈夫なのか? と思うかもしれないが、不思議なことに、膝に乗り込むと、膝から上と膝から下が分離して、膝は空になる。これなら膝は傷みようがない。
「脛を立てる」という言葉は馮老師のテキストの中で、3つの枢軸の一つとして記されていた。(3つの枢軸:首、腰、脛。全て”立つ”もの)
「膝下はまっすぐ」という言い方で師父から推腿を教わったこともある。
腰の王子は「立脛」という言い方をし、正式には、三種の神器の途中に、「脛はまっすぐですね、体操」というとても面白い体操をすることになっている。
考えてみれば赤ちゃんは立ち上がる時、まず脛を立ててから立ち上がるのだ。
いきなり太ももでは立ち上がらない。
と、このようなことを生徒さん達に教えるのに、足でやるのは難しそうなので、今週は前足(手腕)でやってもらってから誘導してみた。
前足(手腕)と後ろ足(腿足)は同じ構造だ。
跳び箱を飛ぶ時の手の使い方を再現してみると、足の使い方が分かるだろう・・・
左上のイラスト(https://kyoiku.sho.jp/115767/)の真ん中の絵は、台の上に手をついた時の姿だが、実際には、この姿勢の時は、右上の画像①の男の子のように、肘が曲がっているはずだ。
そして、手をついた後、手首の上に肘がきて、前腕がしっかりすると、体重を手の上に預けることができる。(体を持ち上げることができる)→②左下の女の子。
最後に、手で跳び箱を蹴ってフィニッシュ。この時、肘はしっかり伸びている→③右下の男の子。
実は、①→②→③ は、歩く時の下肢の動きと同じだ。
足で膝下までを立て、まっすぐになったら体をのせる。最後は足首のフレックスと膝裏で蹴る。
手を台について台に登ろうとすると、必ず肘を使うだろう。肘が曲がって手と肘が繋がる:あたかも手のひらが肘まで繋がっているかのようになる瞬間があるだろう。この状態になれば、安心して胸や肩を手に乗せることができる。
手の上にダイレクトで胸や肩をのせてしまうとバランスがとれない。
これと同じことが下肢でも起こる。
腰の王子は、脛から足先、足裏を「foot」脛から股関節までを「leg」と言い
肘から指先までを「hand」、肘から肩関節までを「arm」と言う。
本当にそうなっている!
そうなるためには、足首や手首のフレックス、そして足の中や手の中の関節がバラバラに動く必要がある。
今日は対面のクラスで1時間以上かけて細かくこのあたりを説明した。
目から鱗!のはず。
膝が悪くなったからといって太ももを鍛えるのはナンセンス。
しっかり足の中や足首を動かせるようにして、脛下まで足にするような開発をするべきだ。
そして、太極拳の套路の動きはそのように足を使うことが求められている。そのように動くような細かいコツが隠れている。
私はあまり意識しないで動いていたが、それを知るとさらに動きが正確になる。
ただ生徒さんを教える時はかなり辛抱強く誘導する必要がある。
一人一人背屈が正しくできているのかも見る必要がある。
これが完璧にできなくても、感覚が少しでも分かれば、今後の練習の方向性が掴めるだろう。
2024/2/19 <身体開発について 座り方から学ぶ その1>
太極拳の練習が身体開発になるためには、ただ套路をやっているだけでは不十分だ。
使える神経、使える筋肉だけを使い回して練習していても、身体の”開発”にはならない。
今まで使っていなかった箇所が動き出した時、初めてそんな箇所があったことを知る。
自分の身体が世界地図だとしたら、今までこんなところに国があるとは知らなかった、ということを知ること。この河がこんなところまで続いて繋がっていたんだ、と知ること。この国と遠くはなれた別の国の間に実はバイパスがあったのだ、と知ること。そう、身体開発は、身体の中の探検だ。
私が劉師父から学んだのは、体の内側から体を動かす術。
内側から動かすことは息を通すこと。内臓を養い、体を正しく構造通りに動かすことになもなる。瞑想法の導入にもなる。ただ外側の体を動かすのではない。それが”スポーツ”との違いだ。
今週は私自身が自分の体の中で多くの経験をしたので、それをどう生徒さん達に役立つように伝えるのか迷っていた。
いくつか箇条書きでメモ。
①足の背屈と股関節の屈曲の連動
②着地したらまずは足から脛を立てる、その後で膝に乗り込む→膝が開く!(歩法の基礎)膝を潰さずに膝に乗る=足の中の関節のフル稼働(距骨による底屈背屈を含む)
③肩甲骨の挙上・下制。下制のつもりで内転させていないか注意。下制によって体がしっかりする(丹田が充実する)
④肩甲骨と骨盤の動きの連動
骨盤前傾→肩甲骨は下がる(下制)
骨盤後傾→肩甲骨は上がる(挙上)。
太極拳の基本姿勢の検討
⑤背中側の肋骨を動かせるようにする:背中を開く
⑥鼠蹊部の緩み 股関節の隙間 圧腿、前屈にも隙間が必要 引き上げ (ここはも少し分けて説明する必要あり。)
今日は⑥の鼠蹊部の緩みについて少し説明。
太極拳を学ぶ時に、「鼠蹊部を緩める」と教わることがあると思う。
その時、スクワットの時のように鼠蹊部を後ろに引いて、股関節を屈曲させれば、鼠蹊部は緩んだものと思っていないだろうか?
両方の真似をして座ってみると分かるが、日本の座り方はそんなに難しくないはず。私たち日本人は慣れている。
が、左の中国の座り方は、ちょと厄介だ。
上の小さな画像だと分かりにくいので、下に連続写真を載せました。
日本人の正座の仕方は、お尻がダイレクトに踵に近づく
中国人の正座の仕方は、股関節を緩めてまず膝を床につけようとする(まず跪く。中国語で、正座は、「跪坐」 と言うが、跪いてお尻を落とした形が中国。劉師父にやってもらいましたが、やはり、跪くところから入りました。)
実は、タントウ功は、中国人が跪坐をする時の順番に間接を使っていきます。
お尻を落として踵に近づけようとすると失敗します・・・→詳しい説明はいつか書きます。
2024/2/13
足の甲側の意識の話はそこから派生することが多くてどうやって系統立てて教えるのかがよくわからない。
先週はその時その時の生徒さんたちの状態を見ながら、誘導できるところを誘導してみた。
日曜日の生徒さんの中で、「こんなに違うんだ〜!」と歓喜していた二人組がいたけれども、私自身、それに気づいた時に、「なんと!」と同じように興奮したのでした・・・・
ずっとどこかで気になっていた、腰の王子の「大腿骨はだいたいこのへん」体操。
「これは何の練習ですか?」とマジ顔で私に聞いてきた生徒さんがいたけれども、当時は、「首根っこをいれて、背骨を伸ばす(抜背)の練習」程度の回答で済ませていた(実際、王子はトレーナーコースでもそのように教えていました。)。
しかし、「だいたいこのへ〜ん!」の時の両足の開き方が皆、あまりにも曖昧過ぎる!私の生徒だけでなく、王子と一緒にやっている人たちを動画で見ても、王子のように両脚を開いている人を見たことがない。最後のポーズが誰もキマっていない。王子はどう思っているのだろう?「だいたいこのへん」だから大体で良いのか? と思ったりしていた。
左の王子と右のお姉さんの脚の感じが違うのがわかると思う。
王子は両足裏に全体重が乗れるようになっている。お姉さんのポーズだとお尻を上げてもダイレクトで足に乗れない=前腿(膝上)の力に頼って立ち上がることになる。
股関節は足首と常にセットだ。
が、この体操では、ほとんど皆が、足首を無視してビヨ〜んと股を開いてしまう。
というのが私の疑問だったが、足の甲の意識について教える時に、そうだ!と思ってこの体操を足の甲の意識でやってもらったら、左の王子のような形に近づいたのでした。
つまり、皆は、足裏の意識だけで両足を動かしていた。本当は足首、足の前も裏も必要。特に足については足裏の意識しかなくて足の甲の意識のない人が多い。
上の体操を足の甲側を意識してやればもれなく内転筋が効いてしまい、だらしなく股間が開いてしまうことはない。
しかも、ポーズの最後で足の甲側の足首がしっかり折り込めることにより(背屈がしっかりできることにより)、股関節の屈曲がしっかりできるのだ。
股関節の屈曲がしっかりできないと腿裏が使えない。「コマネチスリスリ」は股関節屈曲、腿裏の伸びの練習が入っているが、実際に生徒さんたちにやってもらうと、腿裏お尻が硬くてちゃんと足首に乗りこめない人がほとんどだ。そもそも、足の置き位置が間違っているのだが、それも足の意識が裏にしかないからだろう。(上のお姉さんの画像を見ても、身は前に乗り出しているが、股関節の屈曲がしっかりできていない。その分、腰の反りでカバーしている。)
いずえにしろ、足首の背屈と股関節の屈曲が連動していることに気づいたのは生徒さんたちのおかげ。これによって、太極拳の「踵から力が起こる」ということがはっきりした。
足首の背屈で足首に気(エネルギー)を溜めることで膝にも股関節にも気が溜まる。
地面を蹴る時に股関節が伸展、膝関節が伸展、そして足首が底屈に向かうことで、丹田の気が股関節で股関節の気と共に膝関節へ、丹田・股関節・膝関節のエネルギーが共に足首へ、最後に、丹田・股関節・膝関節・足首のエネルギーが合わさって、地面を推す力になる。 短距離走のクラウチングスタートと同じだ。
まずは、前足=手腕でその感覚をつかむのよいかも。
ジーがその練習だ。
太極拳がパンチの練習をせず、もっぱら推手の練習をするのは、そんなエネルギーの流れと出しかた(常に丹田から出すとは限らない。肩関節に溜めておいて、その先だけで発勁する練習もある)。まずは、関節の隙間を見つけること、それからそこに気を溜める練習をする。
肘と膝に関しては、手の伸び、足の伸び自体がそれらの隙間になる。
肘にエネルギーを溜めることは少し教えれば要領がつかめそうなので、今週のレッスンで教えてみるつもり。肘ができれば膝も同じだが、スネと通すのは随分難しくなる。
<追記>
書きながら気づきましたが、「大腿骨はだいたいこのへん」体操、文字通り、「大腿骨」を回せば王子のようになるのでした。足も正しい位置に落ち着く。ただし、「大腿骨」の根っこを意識して回す必要あり。普通の人は、この体操を行う時に、膝を開いてしまう。太ももを使う時に膝に近い部分の太ももの意識が高くなる傾向があることに気づくのが大事。
2024/2/10 <片足立ちは片足でやらない>
今週は「坐胯」と「足指(甲」に着目したレッスンをしてみた。
生徒さん達にやってもらうと理解はさらに深まる。それはいつものことだけど。
「坐胯」は「松胯」をさらに深めて股関節回りの空間に座った形。
劉師父から最近簡単な「坐胯」の練習の仕方を教わったなので、早速生徒さん達に紹介したのだが、やってもらうとなかなか上手くできない。膝を伸ばして片足で立って、そこから胯に座る、というだけのものなのだが、ほとんどの人が、膝上の太ももに乗ってしまうようだ。
どうしてそうなってしまうのか?と見ていたら、片足立ちを文字通り、片足でやっている! 片足立ち(単腿)を軸脚一本で立とうとするのはナンセンスだ。軸脚一本で立つと、胯(股関節)を見つけることはできない。必ず、地面から離れているもう一本の足(の付け根)を使う必要がある。右の股関節を見つける時は、左の股関節が必要だ。引っ張り合いの中で股関節は見つかる。右を外して左の股関節だけを見つけるのは不可能だ。
ということで、改めて、片足立ちを見直すことになった。本当の意味での”片足立ち”というのはないのだ。片足で立ったとしても、常に両足の引っ張り合い、正確には体幹部からの筋肉(腸腰筋)の引っ張り合いが働いているのだ・・・
例えば、上の左端の図のような片足立ちでバランスを取るのはとても難しい。これこそまさに平衡感覚のテスト?ぐらぐらする。
しかし、右側のヨガのポーズのようなものは、常に左右上下の引っ張り合いを作っているので、安定するようになっている。太極拳も同じだ。それには、左右の腸腰筋の引っ張り合いはマスト。丹田はその腸腰筋にハリを持たせる役割を担っている。
太極拳では、まず放松、と、脱力が必要だとされるが、それは体をふにゃふにゃにして弛ませることではなく、あるいは、両手をぶらぶらさせることでもない。体の表面近くにある筋肉の緊張を解くことで体の内側に力を持たせること、その内側の核となるのが丹田だ。それによって内側から体はハリがでてくるようになる。これが体内の張力になり、左右上下前後の引っ張り合いになり、体が内側から膨らむポンの力になる。
足の甲についての話はまた今度。
2024/2/7
「踵着地は正しいのでしょうか?」という質問から、今日のオンライングループレッスンでは、足、足首、脛についてかなり細かいところまで話をしました。ついてこれたかどうか不安なので、少しまとめてみます。
「踵着地」というのが「踵骨着地」という意味なら、それは❌。
足底筋膜をぐっと張って着地するようになる。ショパール間接からリスフラン関節までで着地。しかし、実際には、どこに着地するか、よりも、軸脚がどのように蹴れるか、が大事。
歩く時は、後ろに引く足(蹴る足)を意識する。
ちゃんと蹴れればもう一方の足ちゃんと振り上がってくる。
→昨日書いた、間化の起式の開歩と同じ原理。
<補足>スキップと同じです! スキップは片足が蹴れば片足が上がる。スキップができない人は、上げる足のことを考えている?
太極拳で、「力は踵から起こる」というのは、「踵で着地する」ということではないので注意。
「力は踵から起こる」、というのは、着地した足が踏み込んだ時、足底筋膜を緊張させてしっかりと背屈することによって踵部の関節に力を溜め、それをバネとして蹴ることができる、ということ。
足首の関節を知るべき。
2024/2/6
股関節は腸骨と大腿骨骨頭の間の隙間だ。
およそ関節というものは全て隙間。
運動というのは関節をうまく操ることだ。
その前提として、その関節がどこにあるのか、意識できるようになる必要がある。
四肢の間接では、肘と膝が比較的意識しやすく動かしやすいので、そこから直してもらうことも多い。
『墜肘』をしようとすることで『沈肩』がついてくるし、
(正しい)『曲膝』をしようとすることで『円裆』 ができるようになる・・・
とはいうものの、実際には『沈肩』が中途半端なので『墜肘』ができないし、『円裆』が曖昧なので、『曲膝』ができない(ハムストリングスをゆるめられない)ということになる。(『曲膝』は「膝を曲げる」ことではないことに注意。)
今日のレッスンでは片足立ちを取り上げたが、片足立ちで学べることはとても多い。
例えば、「片足立ちは片足で立とうとしないこと」だ。
太極拳の套路の中で片足立ちになる時に、片足で立たなきゃ、と思って、本当に片足立ちをしようとする人がいるが、「片足で立とう」と思った時点で、もう失敗している。
片足立ちで、「片足立ちになるぞ」と思った瞬間、その軸脚以外の関節がすべて閉じてしまう。片足は片足でなく、全身のバランスでやるものだ。
そう言う意味で この動画は参考に値する。https://youtu.be/ZQm19pc91Hs?si=Pr2MBGxXk7GXZrHW
太極拳なら全身をぐらぐらさせなくても、内側で丹田を使うことによって見た目も動いていないかのように安定させることが可能。(片足立ちの時間が長ければ、丹田は回転させ続けている必要がある。套路の中の片足立ち程度なら、丹田を一瞬止めることで足りるはず)
私のオンラインの生徒さん達の多くは混元太極拳をやっていないため、丹田の作り方もはっきり分かっていないことが多い。短時間でも良いのでタントウ功をして内功の丹田回しを毎日することで、丹田の感覚は次第に養われるはずだが、丹田なしで太極拳の本質を学び得るのか?という個人的な疑問もあるので、簡化24式の解説動画をいくつか見てみたりした。結論としては、簡化は総じて中国の国民保健”体操”になってしまっているので、太極拳の核心は抜き取られてしまっている。太極拳の入り口としてはよいが、そればかりしていても太極拳の門には入れないだろう。しかし、そんな中で、伝説の老師と呼ばれていたという加藤修三老師は、外側から内側に迫ろうと細かな注釈をしている。
私はその加藤老師の起式のデモ動画を見て、なるほど、と腑に落ちたのでした。
簡化では片足立ちの奥義を起式の開歩で教えているのだ・・・
開歩は最初の1分半の説明ですが、
「右足に重心を移したaという運動を、右足の膝を張り出して緩めることで正面に向いて、確実に軸を作ってから足を開くということ・・・」
「右足に重心を移して左の踵が浮くのは、右足と左足が股関節それから真ん中の腰を通してつながっているという大事な項目」
どんな片足立ちでも共通するのは、どうやって足が上がり始めるのか、という勁の作り方。
軸脚がドンと地面を踏んで、蹴る足をそれから持ち上げる、というようなことはあり得ない。
上の加藤老師が解説しているように、軸脚に重心が移ったと同時に蹴り足の踵は浮いている(=膝は曲がって前に出ている=蹴る準備)。ここから、どのように蹴るのか、あるいは、蹴らずにただ開歩するのか、は状況によって変わる。
この片足立ちになれば、パンチもでるし、パンチを出さずに立ち去ることもできるのだ・・・
簡化の起式の開歩はその練習。
ここからどんな蹴りがでるのか、はその後の套路の中で学ぶことになります。
しかし、蹴りの前、片足を上げる前には”腰に両足が集まる”=合、の形になることに注意。加藤老師は”腰を通して両足がつながる”と言っていますが、それは”丹田から両足が生えている”あるいは”両足は丹田で一つになる”と言うのと同じです。
今日の生徒さん達には鼠蹊部を腹に向かって引き込む練習(丹田に集める合の練習)をさせましたが、それによって片足は軸脚になり、片足は蹴り足になります。(その後、蹴りやパンチをした時に丹田の開になる。) 猫の動きを見た方がよく分かるかも。
2024/2/4 <腰を緩める、腰の隙間、腰と腹の関係>
初心者を教える時には必ず言うが、「まずは腰を緩める」。
『松腰』だ。
腰を緩めないと股関節も緩まないし膝も緩まない。
腰を緩めないで運動をすれば、腰や股関節や膝を痛めてしまう。
『松腰』は別に太極拳に特有の要領ではなくて、運動するには不可欠な要領だ。
が、太極拳で特に『松腰』を強調するのはそれ以上の意味がある。
松腰をすることで丹田が作られるのだ。
逆に言えば、丹田を作るにはまず腰を緩めなければならない。
ほっとして腰を緩めれば腹に気が集まる。
この丹田の素になる気を集めてそれを回していくことで丹田の感覚をしっかりさせながら腰をさらに緩めていく。
最初の松腰→腹に気が落ちる→意念と呼吸を使って気を集める→それを回していく(丹田回し)→腰が内側からマッサージされてさらに緩む
ネジを締めたり緩めたり、をイメージすると分かりやすいと思うが、締める、というのは隙間がなくなること、緩める、というのは隙間が開くことだ。
腰を緩める、というのは腰に隙間が開くという感じだ。
太極拳の経典の中の有名な言葉に、「命意源頭在腰隙、刻々留心在腰間」というのがある。
前半は、「意識の源は腰の隙(間)にある」
後半は、「常に腰の(隙)間に心を留めろ」
劉師父は私がまだ初心者だった頃から、上の言葉をよく口にしていた。
当時は、腰の隙間ってどこ? とよくわからず、師父に質問していたかなぁ。
最初は、命門あたりに隙間ができるだろう。
丹田が開発されるとともに、次第に隙間はもっと大きくなる。腰に弾力性が出てくる。
バネには隙間が必要なのと同じ原理だ。
それを作るには、丹田が必要だ。丹田で腰を動かすことで腰は柔らかくなる。隙間ができる。腰を直接動かそうとすると腰は思うように動かない・・・
実は、腰が少しでも緩めば、肩は少し下がっている。
肩を下げると、下っ腹に力が出る=丹田の素ができる。
丹田ができると、腰には隙間ができる。守られる。
丹田があれば腰は傷まない。ぎっくり腰になったりしない。
ぎっくり腰になる時は、腹圧が抜けている時、もしくは、肩甲骨が浮いている時。
昔、男性の生徒さんが、くしゃみをしてぎっくり腰になった、と言って驚いたことがあった。が、それを娘に言ったら、「うん、分かる気がする・・・」と言って、横に寝転がった姿勢で実演して説明してくれた。 なるほど。
2024/2/1 <肩甲骨についてのメモ>
肩甲骨は下に引き下げる
内側に寄せない
下げるには上がらないように注意する
下げ続けるには丹田の力が要る
前屈が苦手な人、前屈ができても腹と太ももの間に隙間が開いてしまう人は、肩甲骨が上がっている。
両脚を前に伸ばして座ったままでいられない人も肩が上がっている。
肩を下げられないと深い息ができない。腹圧が保てない。
逆に言えば、深い呼吸を継続して行う(つまり、吐いても吸っても横隔膜を下げておく 丹田呼吸)には肩甲骨が下げたまま、吸った時に肩甲骨が上がらないように引き下げておく必要がある。
そのためには、肩甲骨と背中(肋骨)の間に隙間が必要。
吐気ではは肋骨のブラインドが下向きに回転するので肩甲骨も下がりやすい。しかし、吸気では肋骨のブラインドが上向きに回転するような感じになるので、肩甲骨も上向きに引っ張られやすい。この時に肩甲骨が肋骨のブラインドが上向きに回転するのを制するように被せて抑えられれば、息が上がってしまうのを防ぎ、代わりに骨盤底筋の運動をもたらすことができる。これによって全身呼吸が可能になる。
実は前屈でも同じような原理が作用している。
息を止めると前屈できない。
息を通すには骨盤底筋まで息を吹き込み、そして骨盤底筋から吸えるようになる必要がある。それができた時、鼻から吸った息が頭頂まで届き、吐いた息は足裏まで届くことが感じられるだろう。