2024年4月

 

 左:馮老師は左足を扣して相手の右足をひっかけ逃げられないようにした上で、膝を曲げて脛で相手の脛を推し倒している。

 

 右:陳項老師は左足を扣して相手の右足をひっかけ逃げられないようにした上で、急に閉歩(左足を右足に寄せる)して相手を倒している。

 

 実は、上の簡化24式の第9式单鞭の最初の扣脚にも同じような技が入っている。

 (参照: https://youtu.be/i8kMrJmAfjU?si=JpOZGbClIzLuDodq)

 

 

 

  両手で相手をリューしながら、本来なら、右足は相手の左足を扣してひっかける。

(動画の中で老師もそのように言っているのだけれども、生徒は扣脚の技をやらずにただリューだけやっています。)

  太極拳は接近戦が基本。リューする時にこの動画のように、相手との距離を大きくはとらない。上の馮老師や陳項老師のように、相手とくっついた中で、足をひっかけてリューをするのが基本。(手と足を同時に使う。相手は手の方に意識がいくので、足をひっかけられると簡単に倒れる。太極拳が足技が妙である、というのはそういうこと。)

  ただ、手足同時に技をかけるのは初心者には難しいので、ここではまず手のリューを教えているのだと思います。

 

  私はレッスンでは、生徒さんに扣脚で相手の重心を失わせる練習(実験?)をしてもらったりしています。ちょうど上の陳項老師のような動きです。相手の両足の間に自分の片足を差し込んで、その足を閉歩して相手の足を払えるかどうか? やってみればわかりますが、股関節以下で足を払おうとしても無理です。体全体で足を動かす必要があります。つまり背骨を踵、つま先までつないでおくということです。

 

  下の左は杨振铎老師(https://youtu.be/q98HVJCiz_o?si=np9x8Q6M2oqE0Ryu)

    右はよく見かける24式示範(https://youtu.be/90WYI-Pys-c?si=OMUx6zSONZ6KvFiO)

 

  左は体に対して両足を大きく開き過ぎているので、両足が体からはみ出ています。

  こうすると背骨は使えず腿ばかり使うような動きになります。

  右の杨振铎老师は(達人級なので)歩幅が狭くても気を落とせるのですが、私くらいのレベルならもう少し両足を開いて背中を弓にしないと背骨を両足先まで繋げないと思います。いずれにしろ、足払いができるくらいでないと扣脚とはいえないかと。

 

     杨振铎老师の動きを分解してみると、背骨を回しているのが分かります。背骨の軸の回転につれて右足が扣をしています。↓

 

  上に対し、下↓はどうでしょう? 

  

 ↑では、背骨の軸を回しているのではなくて、体の前面を前に向けただけのよう。体が西向き(右向き)から南(正面)へと90度回る時は、胸、腹側(胴体の陰面)の向きを変えるという意識では太極拳にはなりません。太極拳のシンボルは球、体は球体であることを忘れないことが大事。背骨の軸を回す、あるいは、背中側を回して体の向きを変える、という意識が非常に大事です。

 背中側を回すことで体の向きを西→南に変えるとそれだけで、脚と背骨の連携が出て、勝手に扣脚 が作れます。

 扣脚の前提として、やはり、含胸、抜背、塌腰をして、背中をポン(膨らましておく)ことが必要です。簡化だけでは習えないのが背骨の使い方、なのかもしれません。

2024/4/23 <肩関節の扱い方>

 

  実際に生徒さんたちにチャンスーを教えていて気づくのは、肩関節の位置の意識がズレているということ。肩関節を回してください、と指示した時に、腕を回している・・・

  確かに、腕を回せば肩関節もそれなりに使われるのだけど、きちんと、肩関節を回転させないと、その先の関節(胸鎖関節や肩甲胸郭関節など)に連動をさせて背中や脇、腹の筋肉を経由して股関節や鼠蹊部、膝、足首・・・とつなげることはできない。

 

  肩関節は自分が腕を回している時にここが肩関節だ、と思っているところよりももっと内側にある。

  この週末のレッスンでは、一人一人の肩関節をぐるっと回してあげた。(私の腕の上に、腕を載せてもらい、十分力を抜いてもらった上で、私が腕をぐるり、と回す。生徒さんが腕を十分に放松していれば、私が肩関節を回すと、その連動が生徒さんに伝わる。生徒さんは驚いて後ろに転けそうになる・・・体が飛びそうになるのだ。)

  肩関節を回すと、体は動きそうになる。それを止めておくだけの腹圧(丹田の力)が必要になる。

   

  関節は二つの骨の間の隙間だ。

  隙間をどうすれば動かせるのか?と思うかもしれない。

  要領としては、二つの骨のうち、体の中心部に近い方の骨を動かすような感覚で使えば、結果的にその関節を動かした感じになる。

 

  例えば、肩関節は、上腕と肩甲骨の接するところの隙間だ。

  この場合は、肩甲骨側の方を回す意識が必要だ。

  上腕骨をだら〜んとして肩から引き離すようにして(腕抜き)、肩関節を開いてその隙間を感じる。隙間を開いたまま、もう片腕も同じようにする。両腕とも肩から引き離せたら、「沈肩』になっているはず。腕を回す時にはとの隙間を回す(というのが理想)。脇の奥の方、タンクトップの腕ぐりのラインあたりを動かす感じになると思う。そこを動かすなら、結果的に胸の方から関節回すことになるだろう・・・腕から肩関節を回そうとするよりも、胸から肩関節を回す意識で動かすことになるはず。(そもそも、腕を抜いて沈肩を作る時点で、胸を操作=含胸が必要になる)

  

 

  ↓https://r-body.com/blog/20220401/6492/ の画像に説明を追加しました。


2024/4/16 <順チャンスー、逆チャンスーのイメージ>

 

  今週はチャンスー(纏糸)を教えていますが、チャンスーは簡単にいうと、関節を回転させることで勁を伝達させることです。体の中心から末端に向かう勁の流れを生み出すのは逆チャンスー、体の末端から中心に向かう勁の流れを生み出すのは順チャンスーです。

  

  チャンスーには関節の意識が不可欠です。関節を次々と回していかないと、勁の流れが途中で止まってしまいます。

 

2024/4/13 <開合とチャンスー その2 太極図で図示>

 

   昨日の話はちょっとぐちゃぐちゃしていたと思うので、陰陽太極図を使って簡単に図示してみました。

 

 陰陽太極図の簡単な見方↓

 上の図をそのまま開合とチャンスーに当てはめると下の図のようになります。

2024/4/12 <開合とチャンスー その1>

 

  今週のレッスンでは、簡化24式を真の太極拳にバージョンアップするにあたって必要になる『開合』の話を総合的に教えました。いや、教える、というより、説明した、と言った方がよいです。私自身がやっとはっきり説明できるようになったばかりで、聞いている生徒さんたちがどのくらい理解できたのかは謎。けれども、一回で全ては理解できなくても、何度も繰り返しているうちに徐々に分かるようになるでしょう・・・。

 

  

  『開合』は手足を開いたり閉じたり、という意味ではありません。『開合』は丹田の開合、言い換えれば、丹田が大きく膨らむのが『開』、丹田が縮小するのが『合』です。太極拳の『太』という漢字が、<大>と<小>を合体させたもので、意味は「大よりも大きく、小よりも小さい」、つまり、極大から極小までを示したものだと言われます。これは太極拳においては、丹田が、宇宙よりも大きくなることもあれば、丹田が砂粒よりも小さくなることがある、というような例で示されたりします。

  私たちの心身は開いたり閉じたりしています。良いことがあって気分がいい時、心は開き、体も外界との境目がないかのように広がります。反対に、調子が悪い時は、心は閉じ、体は外界を遮断する壁のようになり、自分は体の中に閉じ込められたようになります。開と合(閉)の例です。

  丹田を作ると、丹田を広げることで自分が広がりますが、丹田の中心点は維持するので、自分の中心の”点”は残ります。これが、ただ嬉しくて有頂天になって心身が開く、という状態との違いです。どれだけ開いても、中心の一点は残る。これが、「開の中に合あり」と言われるものです。逆に、丹田を縮小させた時、エネルギーは中心に集まっていきますが、その分、外界のより広い範囲が意識されるようになります。ちょうど、耳を澄ませた時の感じです。これが「合」。本当に閉じてしまうのではない。「合の中には開あり」。「合」と「閉」の違いです。

 

  『陰陽開合を真剣に求めるべし』

  馮老師の陳式太極拳入門の本では、入門の手引きとして「開合」についてその原理から応用まで細かく論じられています。まだまだ全ては消化しきれていませんが、やっと、なぜ太極拳において開合がそれほど大事なのか、ということが分かってきたところです。

  太極拳において、開合がないところはない。そう書かれていますが、結局は、生命自体が、呼吸、すなわち、開合なしには存在しない、とういうことです。吐くは開、吸うは合です。

 

  レッスンでは、この『開合』と『纏糸(チャンスー)』の関係を教えました。

  順チャンスーは合

  逆チャンスーは開

  です。

  

  順チャンスーとは、腕で言うと、掌が自分の方に向いていくような腕の自転。小指を手動に尺骨を回転させ、肩関節を外旋させるような動きです。肩関節を外旋させると肩甲骨は引き下ろされて背中に貼り付くようになり、腰や仙骨が前方に推されたようになります。股関節は内旋になり、気は末端から中心(丹田)に向かって流れます。(手先→丹田、足先→丹田) 

  腕のチャンスーの課題は、指や手の動きがしっかりと肩甲骨まで連動することです。(ここは練習が必要)肩甲骨が動かないことには上半身と下半身の連動が起きません。

 

  逆チャンスーとは、腕で言えば、掌が外に向いていくような腕の自転です。親指を手動に回転させ、脇が広がるように動かします。肩関節は内旋、肩甲骨は左右に開いて背中から浮くような感じになります。これにより、腰は丸くなり、背中の弓がきつくなります。股関節は外旋になります。この時、気の流れは丹田→末端になります。発する、開になります。

  

  例えば、簡化24式の「如封似闭」の動きであれば、①前に出た両腕を交差させて両掌を上に向け、両腕を左右に開きながら自分の方にひきつける動作。

2024/4/12 <開合とチャンスー その1>

 

  今週のレッスンでは、簡化24式を真の太極拳にバージョンアップするにあたって必要になる『開合』の話を総合的に教えました。いや、教える、というより、説明した、と言った方がよいです。私自身がやっとはっきり説明できるようになったばかりで、聞いている生徒さんたちがどのくらい理解できたのかは謎。けれども、一回で全ては理解できなくても、何度も繰り返しているうちに徐々に分かるようになるでしょう・・・。

 

  

  『開合』は手足を開いたり閉じたり、という意味ではありません。『開合』は丹田の開合、言い換えれば、丹田が大きく膨らむのが『開』、丹田が縮小するのが『合』です。太極拳の『太』という漢字が、<大>と<小>を合体させたもので、意味は「大よりも大きく、小よりも小さい」、つまり、極大から極小までを示したものだと言われます。これは太極拳においては、丹田が、宇宙よりも大きくなることもあれば、丹田が砂粒よりも小さくなることがある、というような例で示されたりします。

  私たちの心身は開いたり閉じたりしています。良いことがあって気分がいい時、心は開き、体も外界との境目がないかのように広がります。反対に、調子が悪い時は、心は閉じ、体は外界を遮断する壁のようになり、自分は体の中に閉じ込められたようになります。開と合(閉)の例です。

  丹田を作ると、丹田を広げることで自分が広がりますが、丹田の中心点は維持するので、自分の中心の”点”は残ります。これが、ただ嬉しくて有頂天になって心身が開く、という状態との違いです。どれだけ開いても、中心の一点は残る。これが、「開の中に合あり」と言われるものです。逆に、丹田を縮小させた時、エネルギーは中心に集まっていきますが、その分、外界のより広い範囲が意識されるようになります。ちょうど、耳を澄ませた時の感じです。これが「合」。本当に閉じてしまうのではない。「合の中には開あり」。「合」と「閉」の違いです。

 

  『陰陽開合を真剣に求めるべし』

  馮老師の陳式太極拳入門の本では、入門の手引きとして「開合」についてその原理から応用まで細かく論じられています。まだまだ全ては消化しきれていませんが、やっと、なぜ太極拳において開合がそれほど大事なのか、ということが分かってきたところです。

  太極拳において、開合がないところはない。そう書かれていますが、結局は、生命自体が、呼吸、すなわち、開合なしには存在しない、とういうことです。吐くは開、吸うは合です。

 

  レッスンでは、この『開合』と『纏糸(チャンスー)』の関係を教えました。

  順チャンスーは合

  逆チャンスーは開

  です。

  

  順チャンスーとは、腕で言うと、掌が自分の方に向いていくような腕の自転。小指を手動に尺骨を回転させ、肩関節を外旋させるような動きです。肩関節を外旋させると肩甲骨は引き下ろされて背中に貼り付くようになり、腰や仙骨が前方に推されたようになります。股関節は内旋になり、気は末端から中心(丹田)に向かって流れます。(手先→丹田、足先→丹田) 

  腕のチャンスーの課題は、指や手の動きがしっかりと肩甲骨まで連動することです。(ここは練習が必要)肩甲骨が動かないことには上半身と下半身の連動が起きません。

 

  逆チャンスーとは、腕で言えば、掌が外に向いていくような腕の自転です。親指を手動に回転させ、脇が広がるように動かします。肩関節は内旋、肩甲骨は左右に開いて背中から浮くような感じになります。これにより、腰は丸くなり、背中の弓がきつくなります。股関節は外旋になります。この時、気の流れは丹田→末端になります。発する、開になります。

  

  例えば、簡化24式の「如封似闭」の動きであれば、①前に出た両腕を交差させて両掌を上に向け、両腕を左右に開きながら自分の方にひきつける動作。

 左は楊式の「如封似闭」ですが、スタイルは違っても、息の使い方、内気の使い方は原則、上と同じです。(https://youtu.be/q98HVJCiz_o?si=iWERjh_NakFzI696)

 

 

 順で溜めて(合)、逆で発する(開)。

 

 発する時は(吐く時は)、一気に吐かないで、丹田の気を残したまま吐いていきます=「開の中に合あり」

 そのためには、吐く息は腹底に向かってはいていきます。前方に吐き出しては絶対にダメです。気沈丹田をしていきます。背中が弓になるのは、息を下向きに吐き込んでいるからです。

 左は楊式の「如封似闭」ですが、スタイルは違っても、息の使い方、内気の使い方は原則、上と同じです。(https://youtu.be/q98HVJCiz_o?si=iWERjh_NakFzI696)

 

 

 順で溜めて(合)、逆で発する(開)。

 

 発する時は(吐く時は)、一気に吐かないで、丹田の気を残したまま吐いていきます=「開の中に合あり」

 そのためには、吐く息は腹底に向かってはいていきます。前方に吐き出しては絶対にダメです。気沈丹田をしていきます。背中が弓になるのは、息を下向きに吐き込んでいるからです。

2024/4/7 <勁によって上体の形が変わる その②>

 

  昨日は上体が少し傾く例を出しましたが、実は、それは、両手が前に出る技の場合です。ジーやアン、搂膝拗步,搬拦捶などがその例です。注意は前方にあります。この時は、含胸抜背で背中を撑して(張って)弓状にした上で、上体は少し前方に傾いたようになります。上体を垂直に立ててしまうと、前方に推す力が途中で止まってしまい、推しきれません。  

  太極拳の原理に、『无过不及』(「過と不及、が無い」=過ぎすのも及ばないのも不可)というのがありますが、上体を垂直に立ててジーをすると、必然的に「不及」になってしまうということです。後ろ足で地面を推した力が掌に達して抜けないようにするには、背中を縦横に張って上体を少し傾ける、実際には、勁を通して推そうとすると、そうなってしまう、というのが本当です。練習の中で実際に推す練習をして会得すべきところです。

 

  続いて、杨振铎老師の動画では、上体が前方に傾かない例を説明してくれています。


2024/4/6 <勁によって変わる上体の形 ①>

 

 下のどちらの姿勢が正しいでしょう?

 

  上は以前紹介した杨振铎老師の動画の一場面です。(https://youtu.be/q98HVJCiz_o?si=Zt0Oy9whd5cY26bv 42分あたり)

  弓歩で前に移動した時、この場合はジーをした時の姿です。

  

  背骨をまっすぐに、というと、左のような姿勢をとってしまう人がいるけれども、それは間違いだ、と動画では説明しています。正しいのは右の姿勢です。

  左の姿勢では腿が突っ張れない。力がでません。

  右のように少し前傾姿勢になるのが自然です。(といっても、背中の弓があまりうまくできていませんが。)

  

  私の印象では、簡化では左のような姿勢をしている人が多いイメージです。胴体が前に進んでいないので重心がうまく前に運べず、結果的に前腿でブレーキをかけてしまっている、そんな状態です。円裆になっていない、というのは、股(骨盤底筋)が使われていない証拠。脚だけで動いているので股関節や膝に過剰な負担がかかかります。注意が必要。

 

  ↓下に載せたの二枚のGIF画像は、相手の力にどれくらい耐えられるか、という実験の場面の一部。

  

  左側は、胴体を垂直に立てた姿勢。

  右側は、、少し前傾姿勢で後ろ足を突っ張っているもの。

 

  どちらが強いか(安定しているか)、というと、右側。

  両足が突っ張ることができる(=股の力が使える=骨盤底筋が使える)と、両腕もつっぱれるのでしっかり推すことができます。

 


2024/4/5 <プリセツカヤに見る胸椎の回旋>

  

   最近、昔のバレエダンサーは凄かった、ということに気づいたが、それはちょうど、昔の太極拳のマスターは凄かった、というのと同じ感じだ。体が今よりも活き活きしている。そんな時代だったのだろうか? 現代はテクニックは上がっているようなのだけど、末端が発達して中核の弾けるような感じが失われているようだ。時代・・・何が変わったのだろう?

 

 下は腰の王子も絶賛するプリセツカヤと、現代バレエのトップに君臨するザハロワの比較。プリセツカヤの胸郭の開きを見ると王子が絶賛するのも分かる。ここが開くことで、無理なく脚も上げられる。ここが開かずに脚を高く上げると必ず腰を痛める。プリセツカヤの体の捻りも見事で、男性ダンサーと絡まったように見える。比較するとザハロワは男性ダンサーがいても一人で踊っている感じ。太極拳の粘黏连随,ねばくひっついていく感じは体が開いているからこそ可能になる。アメーバーのように液体に近くなるのも体が内側から開くから。体が縮こまると個体になる。

2024/4/4

 

  レッスンの振り返りと課題

 

  直近は昨日のグループオンライン。

  簡化24式の動きでこれまで教えてきたことがどのくらい使えるのか実験。

  簡化は太極拳の入門として編成されていて、多くの場合は動きが真似できればそれでよし、となるが、実は、太極拳の套路は技を連ねたもの。技を知らずに動いても、意味を知らずにお経を読むようなもの、あるいは、意味を知らずに外国語の音を真似てしゃべっているようなもの。どれだけ上手に読めても、中身はありません。

  そこで、太極拳の通常の練習では、ある程度、動きが真似できるようになったら、一っ式ずつ技を解説して、それに沿った意識の使い方、力の出し方を学びます。ここからが内側の中身の練習です。

 

  昨日は一人の生徒さんからリクエストのあった、簡化24式の「如封似闭」と「十字手」「収式」、を深掘りしました。

  「如封似闭」が「揽雀尾」と異なるのは、ジーが前後だけでなく左右にも広がること。つまり 「如封似闭」は典型的な開合の動きです。

  ①右腕の下に左手を差し込む動作、実はこれは「十字手」の一つの形です。

   「十字手は万能の手」と師父から教わったことがあります。

   「十字手はなぜ強いのか?」これが分かれば、太極拳で太極円が隠れて多様されていることに気づきます。まさに十字手は太極拳の核心的存在です。このあたりを昨日は解説しました。

   ②右手の下に左手を差し込む形、これは、両手を前に差し出していた時に相手に手首を掴まれた時の典型的な外し技です。陳式の混元太極拳では「上歩七星」の中で同じような動きがあります。並行に前に差し出した両手の手首を取られた場合、まず、やるべきことは両手首をクロスにする=十字手にすることです。そうすれば両手首を回転させることが可能になります。簡化24式の「如封似闭」の場合は両手首を引っ付けたまま外旋させて、そのまま左右にポンして開くことで相手の手を外せます。十字手の合から、回転ながら左右に開くポン=開です。合→開の動き。しかも、その過程でチャンスー(腕、肩関節、腰、股関節、足首などが連動して回転)が入っているので、チャンスーがセオリー通りに完璧にできればものすごい力が出ます。まずは、手首の回転が肩甲骨まで連動するよう練習することが必要です。(前腕しか回転しないのは不味い。少なくとも上腕は回ってほしい。十字手になって両手首を軽く押さえつけるように回転させれば肩関節の中が動きやすいはず。十字手は関節の連動が起きやすい。)

 

  ③そして、両腕を開いて後ろの弓歩になっていく時の両腕は、相手の両腕を左右に開いているという、相手との絡みを”情景”として想像することが大事。そうすれば、両手はただ開いているのではなくて、”撑“している(内側からプッと膨らまして両腕の外側を突っ張っている)という内気の感覚が得られるだろう。 太極拳の経典の中で、” (情)景”が大事だと言われる所以です。

 

  ④後弓歩は大問題。前腿に乗っているようではダメです。ハムストリングスを使ってください。ここはレッスンでもひっかかりました。

   ほとんどの生徒さんがハムストリングスを上手に使えません。

   最近はっきりしたのは、前肩では絶対にハムストリングスは使えない。

   肩甲骨は下方に引っ張り落とさなければなりません。

   昨日は、ハムストリングスがほとんど使えていない生徒さん達に、ある腕の形をさせることでハムストリングスを使って歩く感覚を味わってもらいました。肩が正しい位置にくれば嫌でもハムストリングスを使うことになります。

   肩が問題・・・

https://youtu.be/-xQd1zxkAy8?si=bXKAbebgt0Fvx8VP より

 

弟子は腹圧が抜けてしまい、上半身と下半身が分断。ちゃんと地面を蹴れない(蹴った力が腕に達しない)。 後弓歩になる時も凹んでしまって膝に乗ってしまう。

 

これを解決するのが大きな課題です。

 

『今日のメモ』毎日の練習は気づきの宝庫。太極拳の練習の成果が何に及ぶかは予測不可能。2012年9月〜のアーカイブは『練習メモアーカイブ』へ

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練習のバイブル本

 『陳式太極拳入門』

   馮志強老師著

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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

発表の抄録、資料はこちら