2024年5月

2024/5/29 <両腕を体の内側から引き出す 前鋸筋>

 

  先週は海底針における腕の使い方から、”脇を引き出す”とか”腕を引き出す”ということを書いたが、これは、簡単に言えば、<”前鋸筋”を活用して腕を使う>ということだ。

 前鋸筋を使わずに腕を曲げ伸ばししても意味がない。太極拳に腕の曲げ伸ばし(肘の曲げ伸ばし?)というものはない。内側の勁を丹田から脇経由で手心まで押し出していく(ところてんを突き出すように)のが太極拳の腕の使い方。曲げ伸ばしをしてしまうと、関節が閉じてしまうので、押し出すことができないのだ。あるのは、曲げ伸ばしではなくて、伸び縮み。

https://www.bilibili.com/video/BV1Hz411e7SG?p=7&vd_source=17d554944a01492e6c3d58819c8628fb より

      傅清泉老師による解説

 

  体が縮んだ(=腕が縮んだ)ところから、次第に体が開いて腕も伸びている。

  太極拳の核心である、開合(この場合は合→開)だ。

 

  

https://youtu.be/rQkTmB9g3rk?si=o95GVGLzTvjnEAgr

 

残念ながら、多くの老師が左のような腕の使い方をしている。これは打った最後に后撑(背中を張り出して手と引っ張り合いの力を出している)をしているが、太極拳の大きな特徴は、腕が動き出した最初の段階で打てること。(空手のように)腕を伸ばした時に打撃をするものではないところがミソ。だから、太極拳の対練は打ち合いではなくてひたすら推し合い(推手)なのだ。

 ↑左から右へと動作

 

 上段の傅老师は、左の一枚目の状態で自分に接している敵を推す(打つ)ことができる。

 同様に、二枚目から最後の六枚目まで、どこでもその場所にいる敵を打てるような体の使い方をしている。これが太極拳。

 

 下段の老師は、左の一枚目から三枚目までは打てない。脇がつながっていないから打っても手打ち。逆に敵に腕をとられたら上体は崩れてしまう。四枚目あたりでやっと胴体と腕をつないでいるが、そこから先はなぜか前に打ちながら背中を後ろに引いてしまっている。これでは前に打つ力は止まってしまう。最後のポーズだけ辻褄を合わせたのかなぁ、と思う。

 

 本来の太極拳の動きかがは上段です。

 

 最初から前鋸筋をセットして前鋸筋で推していきます・・・(実践ではそうならざるを得ないです。)

 

 ジーに似た前鋸筋のトレーニングを見つけたので試してみると良いかと思います。

https://ar-ex.jp/sakudaira/652557814209/%E3%82%8F%E3%81%8D%E4%B8%8B%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0

 

2024/5/28 <後弓歩>

 

    後弓歩は難しい。これができるなら前弓歩は簡単。横の弓歩も問題ないだろう。

 

  なんとなく後弓歩をしてい生徒さんに、「それでしっくりくるか?」と聞くと、首を振る。後弓歩でしっくり”はまる”のが目標だ。なんとなく、ではまだ発展途上。

 

  下は中国のサイトで検索した手挥琵琶の定式。

左は劉師父による混元太極拳の中の後弓歩の動作。

深めに行うことで、しっかり腰(帯脈、丹田)をつかっている。

 

 

普段の練習の時には、この動作をさらに深くして座っていくことで、後弓歩の正しいバランスを確かめている↓

最後まで無理せずに座れるなら後弓歩は正しくできている。上の”老師”たちの後弓歩では尻餅をついてしまうかな?


2024/5/27

   気功や太極拳を始めた時に、「脇に卵を一つか二つ挟んだようにして立つ」と言われたことはないだろうか?
 バレエでも、脇を広げること、先生によっては「脇にサボテンがあると思いなさい」と言ったりする。閉じると刺さるのだ。

 気功や太極拳を少し学んだくらいではその重要性が分からない。
 しかし、バレエでピルエットをしたり、片足爪先立ちで静止したり、アラベスクで後ろに脚を上げて止まろうとすると、嫌でも脇を広げて腕を引き出さなければならなくなる。
 
 テニスやゴルフ、野球で投球するにもバットを振るにも、その直前に胸の中で息が広がり脇が開いて腕が胸の中からがぐーんと引き出される。これができないと手打ちになる。

  結局、脇を開けて腕を胸から引っ張り出すのは上腕を胴体に入れ込む作業なのだ。胸鎖関節から腕は始まるが、胸鎖関節から腕を使おうとするとそうなるということだ。その結果、右腕と左腕は胸の中央で繋がり、一本になる。

2024/5/26 <上腕を引き出す 腋、肩傍の使い方>

 

 海底針で右手を斜め下に突き刺していく時に、”腋を深くして腕を引き出していく”、というのは、そうしないと、丹田が失われてしまう(体の中心を失ってしまう)からだ。

 内功をしっかりやっていると、丹田を失わないような体の動き方が自然に身についてくる。右腕と左腕が胸の中で繋がって一本になるというのも、そうでないと丹田が失われてしまうからだ。

 

 最近のレッスンでは積極的に太極棒を使って、全くの初心者でも丹田の感覚を得られるように指導している。棒を回すと内側で何かが動いている、という感覚、そして、棒の動きに収束をかけて止めていくと、内側で動いていたものが一箇所に集まる、という感覚、その集まった場所のことを”丹田”と呼ぶ、というということ、このくらいは、一回目の練習で分かるようになる。

 練功の経験がある人には、それに加えて、右腋と左腋の感覚を導いてあげれば、右腋と左腋の間が胸の中で繋がる感覚も得られる。しかも、その時に「含胸」にならざるを得ないことにも気づく。

 

 今週の週末の対面レッスンではこの”腋”の感覚を教えた。

 キーワードは前鋸筋を作動させる、ということ。イメージは昔の中国人の合掌だ。日本人の合掌ではない。

 腋から上腕が引き出されているのは、上段真ん中の男性とその右隣の女性。

下段左の女性のヨガのポーズは、体を固めているため、形は似ているが腋が使えていない。一方、右側の男性は腋が使えて上腕が引き出されている。(こう見ると、腋を使うには気を流し続ける必要がある)

 

 腋を深く引いて上腕を根っこから引き出す、というのは腋から肩関節を開く、ということだ。(レッスンではガイコツ模型を使って説明しました。)きっと、なるほど、と分かってくれたはず。

 これができると、太極拳の動きが全く変わってきます。

 

 例えば、楊式太極拳の宗師、杨澄莆。若い時と晩年の写真を比べるとその違いは一目瞭然。

https://mp.weixin.qq.com/s?__biz=MzI2MTQzODQ0MA==&mid=2247564340&idx=1&sn=c0e88098d6aa451c1e8f16b1221761e4&chksm=ea59d2b3dd2e5ba570e9685e3c8a3f11c83f07eeaece627e8c13fcc4fe9473f38f5eb3153798&scene=27

 

 腋を引き出すのはジーの時だけではない。いつもそうなのだが、特にその出来不出来が分かるのがジーとアンだ。上はアン(下方へ推す動き)の例。

 今日のレッスンで、生徒さんにアンをやってもらったが、ただ手を下に下ろしているだけでアンだと思っている場合が多い。初心者のうちはそれだ良いが、太極拳では常に勁(内側の内気の流れ)を意識する必要がある。勁がなければただの体操になってしまう。

 

 上の右側の写真では、右手のアンが形だけのアンになっている。この腕は推せていない。

左側が正しいアンだ。

 2つを比べると、右側の身体が左側より”落ちている”のが分かるだろうか?

 右手で下を推そうとして体が落ちてしまっている(頂勁が失われている)。

 体が落ちるとアンの技はかけられない。

 このあたりは、文章だけではピンとこないので、実際に技を体験する必要がある。

 今日のレッスンでは、アンを正しくやった場合と、右の写真のような形でやった場合と、二種類を生徒さんに対してやってあげた。

 「これが正しいアン、これが正しくないアン」と説明しながら、技をかけてあげると、生徒さんはすぐに違いが分かる。右画像のようなアンをしても、生徒さんの体はビクともしない。ちゃんとアンをかければ生徒さんの体は崩れる。相手を崩せないアンはアンではない・・・

 

 相手の体勢を崩せるか否かは、相手の体の中心部、少なくとも背骨に影響を与えられるか否かによる。そのためには、こちらのアンをかける腕もすくなくとも背骨につないでいる必要がある→結局、海底針で説明したようなことになる。

 

 検索をしていて出てきた、中国の神韵芸術団の挨拶に関する説明の中の画像はどれも脇がしっかり使えている。とても中国っぽい。私たち日本人は腋が落ちているので意識的に引き上げる必要があるかも(と私自身が思います。)https://ja.shenyunperformingarts.org/news/view/article/e/1D3xNafXY5A/%E6%8E%A5%E8%A7%A6%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A7%E3%81%82%E3%81%84%E3%81%95%E3%81%A4%E3%81%99%E3%82%8B%EF%BC%96%E3%81%A4%E3%81%AE%E6%96%B9%E6%B3%95.html

 


2024/5/24 <海底針の用法 その2>

 

  海底針に注目してみているが、どの式も技のバリエーションはいくつもある。伝承されている技もあれば、師がオリジナルで自分なりの技を作り出すこともある。

 

 

  簡化24式の海底針の用法説明を見ると、多くの場合が、左手で相手の手を払って、右手で相手の急所を刺す、というもののようだが、本来の海底針は、昨日のメモで紹介したように、外し技から始まるもので、相手の出方によって技が変化する。太極拳の攻防は空手のように相手との間に距離を保つのではなく、ほとんど接触するかのように絡んでいる。しかも、防御が攻撃になる、というスタイルなので、一方的に打つ、というよりも、相手に打たせてそれを逆手にとる、ということが多い。

  空手に”外し技”はあり得ないが、太極拳に外し技が多いのは、そんな攻防のスタイルかに起因している。

  

  とみると、やはり、海底針の用法は、昨日メモに書いた楊式に伝わるものが本質的だろう。

 

  海底針は陳式の套路にはないので、一体それがどのように相手に作用するのか、私自身が試してみたくなった。

  そこで、今日の練習の時に、生徒さんに右手首を握ってとってもらい、それを外せるかどうかやってみた。

 とりあえず、引き抜いて外す方を動画に撮りました。引き抜くにしろ、突き刺すにしろ、相手の手を外すには、自分の手を背骨につなぐ必要があるのが(やってみると)分かります。それができないと、うまく外せない。結局、太極拳のいつもの、含胸だの抜背だの塌腰が必要になる。

 腕を背骨につなぐためには、腕をぐ〜んと脇から引き伸ばさざるを得なかったのだけど、それは、杨澄莆が書いていた通り。刺すにしろ、引くにしろ、脇を広げないと技にならない。そして、左足は完全に虚歩、つまり、右足一本足にならないと技にならないのも実際にやってみて分かりました。

 

  と自分で検証してみて分かったのは、5/22のメモで載せた七枚の画像のうち、海底針の技がかけられるようになっている定式の形をとっているのは

 とりあえず、引き抜いて外す方を動画に撮りました。引き抜くにしろ、突き刺すにしろ、相手の手を外すには、自分の手を背骨につなぐ必要があるのが(やってみると)分かります。それができないと、うまく外せない。結局、太極拳のいつもの、含胸だの抜背だの塌腰が必要になる。

 腕を背骨につなぐためには、腕をぐ〜んと脇から引き伸ばさざるを得なかったのだけど、それは、杨澄莆が書いていた通り。刺すにしろ、引くにしろ、脇を広げないと技にならない。そして、左足は完全に虚歩、つまり、右足一本足にならないと技にならないのも実際にやってみて分かりました。

 

  と自分で検証してみて分かったのは、5/22のメモで載せた七枚の画像のうち、海底針の技がかけられるようになっている定式の形をとっているのは

2024/5/23

 

  套路の動作が正しいか否かを見るには、その動きの”意味”を知ることが不可欠。

  何をやっているのか分からないまま動いていると、ただの踊りになってしまう。

  形を大体覚えたら、各々の式の基本的な用法を知る必要がある。

 

  

  楊式の有名なマスター達が書き残した技の説明を見ると、海底針は、「右手首を相手に握られて取られてしまった時に、どう対処するか?」、という観点から書かれている。(https://mp.weixin.qq.com/s?__biz=MzA5OTc4MTA5OQ==&mid=2657638078&idx=1&sn=861d606313dcd81d1074afdc45ebbb53&chksm=8b61e63abc166f2c697543af260fea10db2a6dfdba9b79d1f42c50da9b1a9e4ec15518785ea4&scene=27

  というのは、楊式の伝統的な套路では、海底針は、左楼膝拗步の次の式で、左楼膝拗步の最後に右手で相手を打ったところを、相手に右手を取られてしまった、というシナリオが描かれているからだ。

 

  この時、右手を前方下方へ突き刺すように相手の手を外すやり方と、逆に、右手を後方に引き抜いて外すものもある。引き抜いただけでは外れなかった場合は、腰を沈めて外す。

  

 <杨澄莆>

      ・・・身足往回缩劲,右手用力往下伸肱直送下,

   (身体と脚を後ろに戻す力を使って、右脇を伸ばし右手を真っ直ぐ下方へ突き刺す)

 

  <杨振铎>・・・设对方以右手握我右腕,我即屈右肘坐右腿,向右转体将右手向右侧提回。

   (相手が自分の右手首を握った時、自分は右肘を曲げて右腿に坐り、右に体を回して右手を引き抜く)

 

  推したり引いたり沈めたりする、海底針の用法を説明している動画の例:https://haokan.baidu.com/v?pd=wisenatural&vid=12211334758092201153

 

 

  技は研究する必要があります。うまくできると楽しいのでハマる人もいるかも。

 

   

2024/5/22 <太極拳の基本要領の套路動作への適用>

 

  今日のオンライングループレッスンでは両腕を一本にして背中を使う要領を教えようと頑張りました。このグループレッスンでは日本(プラスオーストラリア)の様々な場所から集まった4人をまとめて教えていますが、グループ結成から2年半近くになり、内側を使う、感覚を実際の套路の動きで応用していくこともできるようになってきました。

  私は普段陳式の混元太極拳を教えているのだけれども、生徒さん達のほとんどは混元を知らないので、簡化の動きで説明。簡化は動きがシンプルなだけに、ある意味陳式よりも高度になります・・・

 

  なぜか24式の最後の式から逆行して検証をしているのですが、十字手、如封似闭、搬拦捶、 闪通臂、 海底针などは、特に腰や背中を開いて両手を一本に繋げておくことが必要になります(もちろん、最初から、右腕と左腕は一本につないでおくのだけれども、このあたりはそれができないと形にもならない)。

 

  例えば、海底针。

  各々の老師が各々の形でやっているけれども、本当はどうなのか?

  単純にいえば、下の海底针の定式の時、右足は実、左足は虚です。

  その点だけ見ると、下の画像のうち2枚は脱落します。   <続く>

2024///5/19 <円裆 松胯の関係 その4 四股を参照>

 

 ポイントだけメモ

 

 弓歩や馬歩の時に、体重を股関節には乗せません。

 股関節に乗ると股関節が自由に動きません。

 

 そもそも、体重を股関節やお尻に全て乗せてしまう、ということ自体が問題。

 

 四股は決して股関節に体重を乗せません。裆(股、骨盤底筋)まで”気”を下げます。

 お相撲さんの四股を見ると、首が短くなって肩が上がったように見えるのが、脱力によって(体を下げずに)気を下げている(丹田を骨盤底筋まで下げている)証拠。

 上段はhttps://www.instagram.com/sumokyokai/p/CBSKja4hv4U/?img_index=2

より阿炎力士の四股

 

 下段は左:https://dietplus.jp/public/article/news/20170725-075171

    右:https://my-golfdigest.jp/training/p36335/

 

上段と下段はどこが違うだろうか?

  下段左は、気が股まで落ちていない。股関節でストップしている。股関節のストレッチの意識? 

  片や、下段右は、股(骨盤底筋)まで落ちようとして体を落としてしまった。これでは和式トイレスタイルだ。

 

  そして上段と下段の最大の違いは、上端の本当の四股のポーズなら、そのまま両股関節をクルクル回すことができるのだが、下段のポーズでは、股関節に乗ってしまっているので股関節を回すことができない(動かせない)ということ。

  太極拳や相撲など、ここから、動く、という場合は、下段のようなポーズは使えない。

 

 なぜ股関節に乗っかって股関節にロックをかけてしまうのか?

 その根本的な原因は何か? 

 股関節を開こうとするのではなく、股関節が開いてしまうように体を使うのが相撲や太極拳での体の使い方だ。

 それには、股関節を開く前に、別の場所を開く必要があります。

 それはどこでしょう?

 

 ↓太極拳ではどのくらい深く腰を落とすかによって、浅い高架、標準的な中架、そして低い低架とよばれる架子がある。

 四股に近いほど深く腰を落とすのは低架。

 馮老師は低いのを勧めていなかったが、馮老師の師、陳発科の息子、陳照奎は低架式だった。下の上段は陳照奎とその弟子、楊文笏。

下段の馮老師に比べて一段姿勢が低いのが分かると思います。

 

 低いのは足腰を鍛えるため、と言われますが、実践ではこんなに低い姿勢はとりません。

 相撲でも実際に相手と戦う時には、四股で深くしゃがんだ姿勢よりもずっと高い姿勢でいることが普通です。

 つまり、四股は全身を開発するトレーニング方法。股関節だけを狙ったトレーニングではありません。

 上半身の放松、含胸、抜背、塌腰は必須。

2024/5/22 <太極拳の基本要領の套路動作への適用>

 

  今日のオンライングループレッスンでは両腕を一本にして背中を使う要領を教えようと頑張りました。このグループレッスンでは日本(プラスオーストラリア)の様々な場所から集まった4人をまとめて教えていますが、グループ結成から2年半近くになり、内側を使う、感覚を実際の套路の動きで応用していくこともできるようになってきました。

  私は普段陳式の混元太極拳を教えているのだけれども、生徒さん達のほとんどは混元を知らないので、簡化の動きで説明。簡化は動きがシンプルなだけに、ある意味陳式よりも高度になります・・・

 

  なぜか24式の最後の式から逆行して検証をしているのですが、十字手、如封似闭、搬拦捶、 闪通臂、 海底针などは、特に腰や背中を開いて両手を一本に繋げておくことが必要になります(もちろん、最初から、右腕と左腕は一本につないでおくのだけれども、このあたりはそれができないと形にもならない)。

 

  例えば、海底针。

  各々の老師が各々の形でやっているけれども、本当はどうなのか?

  単純にいえば、下の海底针の定式の時、右足は実、左足は虚です。

  その点だけ見ると、下の画像のうち2枚は脱落します。   <続く>


2024/5/17 <円裆 松胯の関係 その3>

 

    結局のところ

  円裆は、股を緩めない、ということ。

   そして、

  松胯は、股関節を緩める、ということ。

 

  問題は股と股関節がはっきり区別できていないことではないだろうか? 

 

  股とは骨盤底筋の部分。関節ではない。

  股関節は寛骨と大腿骨骨頭で作られる関節。

 

  太極拳で常に言われる放松、すなわち脱力とは、関節の隙間を開けること。骨と骨の隙間を開くこと。

  放松の手順として、まず腰の関節(腰椎1番と2番、2番と3番、3番と4番、4番と5番の間の隙間)を少し開く、というのが馮老師のアドバイスだ。太極拳の要領を正確に体現するなら、頚椎(頭部の様々な要領 ここでは割愛)から順番に、胸椎上部(含胸)、胸椎下部(抜背)、腰椎(塌腰)、と進んでいくのだが、そのようにできるのは内気を操れる上級者だ。普通は操作しやすい腰から入り、息を深くし腹圧を徐々に高めて、内気を操って含胸や抜背を実現していく。

 

  ここで、注意が必要なのは、早い段階で松胯をしてしまうと、股が緩んで内気が漏れ胴体が一塊の石のように重く股関節に乗っかってしまうというこだ。

  実はこのような状態こそが、歳を重ねた私たち中年以上の体の特徴だ。

  子供の頃は、背骨が数十個の関節(正確な説明は割愛)として働いていて、胴体は”浮いて”いる。 股関節に上半身の重みがそのままストレートに乗ってはいない。上半身の浮力によって分散されている。

  歳をとってくると次第に使われなく関節が増えてきて、使われる関節だけを使う、という状態になってくる。歳をとると、腰痛や膝痛、股関節痛が増えるのは、腰椎、股関節、膝関節ばかりを使っているからだ。足腰が弱くなった、というよりも、足腰以外の場所を使っていないから足腰に負担がかかっている、というのが本当だろう。

  太極拳はまさにそのような認識に沿った体づくりをさせている。

  丹田を作るのは、脊椎間の関節を開、体を浮かすため、とも言えるのだ。

  

  本来の太極拳は、その”体づくり”に時間をかける。

  それが内功というものだ。

  内功なくして、套路だけ練習すると、使える関節だけを使うような練習になってしまい、使えない関節、使えない部位を使えるようにはならない(天才的にセンスの良い人以外は)。

  現在世界的に普及している太極拳の主流は、胴体を固めて重くして、下半身を酷使するようなものだ。年配の人に合うような形だが、これではますます膝や股関節を壊してしまう。

 

  胴体を浮かせるために必要なのは、股を緩めない、骨盤底筋を緩めない、ということだ。胴体の底が抜けてしまうと、体は落ちてしまう。

 

  このあたりは説明するといくらでも書けてしまうのだが、まずは、股と股関節をしっかり区別する、ということが大事だ。

 

  股関節を緩める、のと、緩めないのとを区別してやってみる。

  そして、股を緩める、のと、股を緩めない、のを区別してやってみる。

 

  それぞれの違いがしっかり体で示せるのであれば、円裆と松胯の関係が理解できるだろう。

 

  難しいのは、股を緩める、と緩めない、の違いかなぁ?

2024/5/13 <円裆 松胯の関係 その2>

 

  中国のサイトを検索してみると、圆裆松胯と言う人と、松胯圆裆という人がいる。

 圆裆と松胯という条件を単純に並列的に捉えていると、どちらでも良いと思えるが(以前の私のように)、圆裆と松胯の関係が分かっている人は、前者、圆裆松胯という言い方をしている。

 

 例えばこんな文章がある。(https://mp.weixin.qq.com/s?__biz=MzA5NDE2NDYwNQ==&mid=2651929803&idx=3&sn=5baee3308fc51852b82f5b5c7726dda2&chksm=8bb75fd9bcc0d6cf8f7cb885ba75e54fe36fe098bd3e13c6e23b6c5108e7af0bf8f93942a63f&scene=27)

 

 タイトルは「太極拳の圆裆松胯とはどういう意味なのか?」

 

 まず、<园裆とは何か?>について説明

 

   园裆の”裆“とは下肢の両股の内側、腹と股の溝を通って会陰部に連結する部分。

  ”圆裆”は太極拳の練習においての特殊な要求で、すなわち、裆部は円形のアーチ状であるということ。摘んで狭くなっていたり、逆に開いてしまっているのも良くない。適度な円形の張りがある状態が必要である。

 

 そして、そうでなけれなならない理由として、頭頂の百会と裆に位置する会陰の間を気を上下に貫通させるにあたって、会陰が引き上がり、会陰部(骨盤底筋)がしっかり張っている必要があるという。

 

 骨盤底筋に張りがないと気が下に漏れてしまい股のアーチを通って足裏に気が届かない。

 圆裆とは会陰と骨盤底筋の要領だとも言える。

 

 引き続き<松胯とは何か?>?について説明がある。

 ここで興味深いのはその一文目。

 「松胯の目的は、园裆を更に良くできるようにすることである。」

 

 確かにその通り!

 松胯することによって圆裆は完成する!

 

 これは自分自身の体で体験するしかない。

 まずは丹田の気を骨盤底筋近くまで沈めることができるようになること。

 いわゆる「気沈丹田」だが、その丹田を骨盤底筋近くまで沈めることが必要だ。

 気を下げる、とか、気を沈める、という感覚が分からないまま太極拳を練習している人(教えている人)もいるようだが、上の中国サイトの文章でも書かれているように、太極拳の「沈穏」や「中正」は気を沈めずして得られることはない。太極拳で強調される放松も気を沈めるための要領だ。

 

 虚霊頂勁という頭部の感覚も、圆裆松胯をすることによってはっきりする。骨盤底筋から頭部に向かっての気の流れが頂勁をもたらすからだ。

 

  

  最近使用した画像で検証すると・・・

 

2024/5/12 <円裆 松胯の関係 その1>

 

  腿の根っこを使う、ということに関連して、太極拳の基本要領である、<松胯>と<円裆>について動画を撮りました。

  論点は、「松胯と円裆はどちらを先にするのか?」というところです。

  ここを間違えると太極拳の基本姿勢が崩れてしまいます。

  

  虚霊頂勁は一番始めにやるべきこと(完璧にはできないにしても、頭は上に掲げて始めます)。

  肩から腕、手にかけては、沈肩→墜肘→松腕(手首)→垂指 です。

  順番は変えられません。(沈肩ができなければ、その先はできません。)

  胴体は、含胸→抜背→塌腰 です。

  これも、含胸がなければ抜背はできないし、この2つがある程度できなければ塌腰もできない、という関係です。

 

  そして含胸→抜背→塌腰 を前提にして下肢の要領が続きます。

  

  <円裆> <松胯> <曲膝>

 

  これら3つをどの順番で行うのか? 

  それが問題です・・・

 

  動画ではそれについて前半で簡単に説明しています。

  後半は理解を深めるための話、実際のレッスンの時のように生徒さん各自が試してみるべき材料を与えています。

2024/5/8 <股関節の使い方=腿の使い方>

 

  なかなかメモを書く時間がとれず、書き記したいことが溜まってしまいました・・・

  

  5月に入ってからのレッスンで私が教えようとしたことの一つは、「太ももの根っこを使う」ということ。

  それより以前は、 「前腿を使わずにハムストリングを使う」と言っていた。

  ただ、本当は前腿も使う。そして、ハムストリングと一緒に内転筋群を働かせることは必須だ。

 

  股関節を回転させてしっかり使えば太ももの筋肉達は正しく使えるのだけれども、股関節の使い方自体が狂ってしまっている。関節を回転させずに、脚をぶらぶらさせている。

  すなわち、<股関節という腸骨と大腿骨の間の隙間>を動かしているのではなくて、股関節ぶら下がっている<大腿骨>を動かすことで、<股関節を使っている>と誤解している人が(特に太極拳愛好者に)多い。

 

動画適宜アップ中! 

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『今日のメモ』毎日の練習は気づきの宝庫。太極拳の練習の成果が何に及ぶかは予測不可能。2012年9月〜のアーカイブは『練習メモアーカイブ』へ

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練習のバイブル本

 『陳式太極拳入門』

   馮志強老師著

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2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

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