2024年6月

2024/6/29 <筋トレと脱力について 塩田剛三の著書から>

 

  今日の練習の帰り道の生徒さん達との会話。

  

  合気道をやっていたことのある男性が参加していたので合気道について少し話を聞いてみる。合気道は太極拳と同じで、”力”を使わない、と私は思っているのだが、その男性が言った言葉が面白かった。「脱力、脱力、と言う割には、達人は鍛えています。塩田剛三先生もものすごく腕立て伏せをしていました・・・」 なるほど。

  横から別の生徒さんが言った。「腰の王子だって、筋肉隆々。あれはものすごく鍛えている身体。」 たしかに。私も王子の上半身裸の画像を見た時は驚いた。

  

  お釈迦さまのことが浮かんだ。

  お釈迦さまだって、ものすごい苦行をした末に行き着いた結論が、苦行では解脱できないということ。だけど、もし、最初から苦行を避けていたら最終的な境地に辿り着かなかったのでは?・・・

  

  結局、会話の最後に私たちはこんな言葉で話を締め括った。

  「やっぱり、力を使って鍛えまくった末に行き着く境地が”脱力”なのではないか?」

 

  家に帰ってから塩田剛三のことを検索。

  すると、あるブログに塩田剛三の『合気道修行』の中からこんな引用文が載せられていました。 https://fullconkarateaikido.seesaa.net/article/97421510.html より

 

  腕立て伏せなんかも毎日ガンガンやっていました。二百五十回くらいは軽くこなしていたのです。懸垂もその気になれば三百回はできました。片手懸垂なんかは朝飯前です。私は中ニの頃、器械体操の大会に関東代表として出場したこともあるくらいですから、もともとそういう腕力には自信があるのです。


(中略)

若いうちは、とにかく肉体を徹底的にいじめてみることです。そうした中から、自分というものが分かってきますし、精神的な強さが身についてくるわけです。そうして、齢を取って行くうちに、次第に力が抜けていきます。そうなったとき初めて筋力に頼らない呼吸力というものの効果を実感することができるのです。
ただし、それも若い頃の徹底的な鍛錬があったからこそ、そこまでたどりつけるわけで、最初から力を抜いた楽な稽古をやっていたのでは、何も生まれません。
植芝先生も、私たちには力を使うなと言っていましたが、本当は若い頃に相当鍛えているわけです。その下地があったからこそ、晩年のあの神技ともいえる境地にたどり着くことができたのだと言うことを忘れてはなりません。

 この著書では塩田剛三の師の植芝盛平開祖についても触れられているが、また別のブログには同書における植芝開祖の言葉や逸話の記述が引用されている。https://www.aikidoshibuya.tokyo/post/2020/10/02/muscle-training

 

 

植芝先生がどんな体をしていたかを振り返ってみましょう。先生の場合、全体的には太いのですが、 筋肉隆々という感じではありませんでした。肖像画なんかではゴツゴツした体のように描いてありますが には少し違います。 ゴツゴツしているのではなく、 全体的にスーツとなめらかなのです。

私はよく風呂で先生の背中を流したり、 あんまをさせられたりしていたので実際に触わっているんですが、とても弾力性があったことを覚えています。押してパッと離すと、 グーンと戻ってくるような感じでした。

そんな先生に手を握られると、やはりちょっと違った感じがあります。

最初はそんなにガッと力が入っている感じじゃない。しかし、 知らないうちにだんだんグーンと締まってくる。つまり、ソフトなんですが、それでいて底力があるような、そんな力の出し方をされていました。

開祖である先生がこういう体質だから、 合気道をやる人間が皆、同じような体を作るべきかというと、そうではありません。先生もよく言っていました。

体を作るというのは自分の心構えであって、自分に即した体を作る、それでいいんだと。

「だから塩田はん、ワシと同じ体を作ったとしたら、あんたは自然には動けん」

とも、おっしゃっていました。 つまり、植芝先生が言うには、合気道は自然であることを最高とする武道だから、自分が無理になるような体を作ってはならないということなのです。

ただし、この自然ということを皆さん勘違いしていることが多い。たとえば、齢を取って体が硬くなってきたからといって、無理矢理に若いころと同じような柔軟体操をやったんじゃ、筋をおかしくしてしまう。

あるいは、体が小さいからというので無理矢理にウエイトトレーニングで 必要以上の筋肉をつけるとしたら、体にリキみがついてしまいます。こういったことは不自然なことなのです。無理が生じてしまえば、たとえ力が強くなっても合気道の奥義に達することはできません。

 

  上のブログにはこの先の引用文も載せられているので、興味のある方は読んで見て下さい。

  塩田剛三先生が、「では、結局、筋力の鍛錬は必要なのか否か?」という問いに答える形で綴っています。

 

 そして、腰の王子。

  どこかで見た腰の王子の上半身裸の画像を探し出すことはできなかったのだけど、2019年に「立腰筋トレ講習会」を開催した際の広告画像がありました。https://www.facebook.com/p/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%AB%8B%E8%85%B0%E5%8D%94%E4%BC%9A-JAPAN-Tategoshi-Association-100064825089887/

 

  先週の練習で、両足をそろえて立ち、壁に両手をついて脇を引き上げたまま、片足ずつ横に45度上げる、というエクササイズを紹介したが、それをきちんとやった人は、2度ほど足を上げただけで、疲れた〜、と辞めてしまった。それは、内功がうまくできた印。 反対に、横に何度足を上げても全く疲れない、というのは、内側が使えていない。ただ足を上げてしまっている。 言い方を変えれば、丹田を使わずに足を上げている=全身の連動がかかっていない。

 

  こう見ていくと、筋肉をつけるのと、脱力するのは矛盾しない。

  脱力する、というのは、外側の力を抜くことによって内側の力を使うためだ。内側まで脱力してしまって腑抜けのような体になっては何のための脱力かわからなくなってしまう。(それを中国語では、歇xi=休憩 と表現する。 放松は歇ではない)

  脱力しないと丹田が作れない。内側に気が集まらない。

 

  そして塩田剛三先生が書いているように、年齢によっても鍛錬の仕方は変わってくる。

若いうちは苦しいことができる。少し苦しいくらい鍛錬しないと根性がつかない。精神力が鍛えられない。歳をとってきたら、汗だくになって鍛えるのはかえって体を損ねてしまう危険性がある。鍛え方は内功重視にする。

  師父も、20代の若い子を教える時は、まず、走らせて疲れさせてからタントウ功をさせる、と言っていた。すぐにタントウ功をさせてもエネルギーが余りすぎていて落ち着かないからだ。40代半ばにもなったら気の量は減っているので、わざわざ走って漏らすのはもったいない。漏らさないように鍛える。でも、鍛える、鍛錬は必要だ。

  太極拳の套路だけをやっていてもただ一通り動いているだけで、中国風のラジオ体操をやっているのと変わらない、としたら、鍛錬が足りない。臍が鍛えられていない、ということだろう。

 

  

 

2024/6/24  <丹田と腸腰筋 腰を開く必要性>

 

 今日のグループオンラインは、弓歩での重心移動の問題解決をすることを期待されていたのだけど、まず、重心移動、と言う時の、”重心”がはっきりしないとその先に進めない・・・いつまでも後ろ足が云々、その時前足が云々、と両足間の移動の議論になって、肝心の”重心”の移動の話が置き去りになってしまう。

 そもそも歩くこと自体が、重心移動の連続なのだけど、歩きを脚だけで考えることがナンセンスだ。胴体が行くから脚が進む。動きは、目や耳などの感覚器官→頭部→胴体→下肢の順番に動く。(感覚器官→頭部 は感覚神経の働き、これを受けて、頭部からでた動きの指令が脊柱管の太い神経から枝分かれして手足の末端へと届く=運動神経)。

 神経の伝達には時間がかかるが、脳が出した指令が足の末端まで瞬時に届くのが使い勝手の良い体だ。未だ使えない部位は、未だ神経経路が開発されていない部位だ。この使えない部位を開発するのが太極拳の醍醐味だ。

 使える部分を鍛えてさらに使えるようにしても、真の意味での身体開発にはならない。

 脳が老化して思考回路が定まってしまい、いつも同じ思考パターンに陥るのと全く同じで、身体も同じパターンでしか動かなくなってくる。使ったことのない未知の領域を見つけるのが体の内側の旅になる。体の外側(筋肉や骨)だけの練習ではなかなか未知の領域に入り込めない・・・

 

 ということで、今ある運動神経で重心移動の練習をしても、おそらく無駄。問題は下半身にあるのではなくて、上半身の開発度にあることが多い。いや、上半身が開発されていれば下半身は自然にうまく使えてしまう。

 

 腋や脇を使うのは胴体をうまく使うコツ。

 実は、脇を使えるのなら、その時丹田が使えている。裏表なのだ。

 丹田ができていれば弓歩は自然にできてしまう。

 

 丹田は腸腰筋を使わせるような役割がある。丹田が使えるなら腸腰筋が使える。腸腰筋が使えるなら丹田が使えている。

 

 ↓丹田と腸腰筋の関係。

 丹田を収縮させたり(膨らませたり、縮ませたり)、あるいは、丹田を回す(丹田回し)ことによって、腸腰筋の伸縮をさせている。

 

 

  腸腰筋の使い方については、藤野暢さんのこのブログがとても参考になりました。

https://www.chacott-jp.com/news/useful/lecture/detail001661.html


2024/6/22 <3つの丹田回しについて>

 

 今日のマンツーマンのオンラインレッスンは内功を知りたい男性が相手だった。

 彼のレッスンは第二回目。

 第一回目の時に太極棒を用意していてくれたおかげで、丹田の感覚がすぐに得られた。

 素手でやるよりも棒を使った方が感覚を得るのが何倍も速い。

 そして丹田の気を回す練習、これが内功だ。

 縦回転、横回転、そして水平回転、三方向の円を描いて回す。

 3次元の世界はXYZ軸、3軸で表される。体の動きはそれら3軸が複合したものだし、体の歪みというのもそれら3軸の歪みとして捉えることができる。

 丹田回しというのは、それぞれの軸で内気を動かせるようにすること。それが正確にできるようになればなるほど、外に現れる体の動きは癖のないスムーズなものとなる。

 

↑左の画像:https://ameblo.jp/takadaman-z/entry-12546940132.html

 右の画像:https://www.hb-nippon.com/2022/02/bsinfo20220219001/

 

<矢状面>

 矢状面の動きが丹田の立回転。背骨の屈曲伸展や股関節の屈曲伸展もたらすものだ。

 背骨は前後に波を打つ。

 この動きは人間の動きの根本的なもの。

 この動きができなくなると生命としての根本的な力が失われる。

 性行為自体がこの動きで成り立っている。

 任脈督脈を開通させる=周天というのもこの矢状面の開発だ。

 腰の王子の三種の神器もまさにこの面の開発だ。

 

 最近注目した甩手でただ腕を前後に振るものも、この矢状面の開発になる。

 上の動画のように、爪先立ちになってから踵を落とすような動きを加えると、任脈督脈を開通させるような動きになる。普段身体を伸ばしていない人にはおすすめだ。毎日伸び縮みをさせていれば衰えはゆっくりになるが、しばらく伸ばさないでいるとあっという間に硬くなるので要注意。

 

 混元太極拳の起式は矢状面の動きです。

 簡化の起式も然り。ポン⇄アンは矢状面。

 

<前顎面>

 内功では収腹功として行われる動き。腹を摩りながら回すような形で、竪円と言われる。

 これは背骨の側屈、股関節の外転内転をもたらす。

 側屈は見落とされがちだけれども、経絡で言えば、胆経を通すような動きで、体を支えるのにとても大事。

 

太極拳の横の体重移動は丹田の前額面での運動を使うけれども、大事なのは、前額面は体の真ん中だけでとるのではなくて、食パンをスライスするように、前(臍)の方から腰(命門)までスライスしながら動かす練習をすること。つまり、竪にスライスしながら矢状面の体の前後のラインを辿っていく(左画像参照)

 

 実はこのスライスがうまくできることによって、前後の重心移動が正確にできるようになる。

 左図の6本のラインはイメージだが、このラインがたくさん描けて、そのどのラインにでも止まることができるようになればなるほど、前後の重心移動は正確、完璧に近づく。推手において、相手と手をピッタリ合わせたまま、離れず粘くくっついておけるようになるのも、重心移動が切れ間なく行えるようになるからだ。

  前後の重心移動を脚でやろうとしていてはいつまでたっても四肢運動から脱却できない。重心は胴体部(丹田)にある。丹田を移動させることが重心移動。

 

 <水平面>

  水平面の丹田回しは、帯脈回しと言われている。

  背骨の軸の回旋が含まれる。

  実は、帯脈回しが最も難しい。というのは、帯脈が意識できるようになるには、上の前額面が臍から命門まで意識できるようになる必要があるからだ。

  そこまでできなくても、とりあえず、回す。

  この水平円はあたかも地球の赤道を回すような動き。地球における赤道が、人体における帯脈だ。

  そして、地球における経線が、人体における12経絡。縦線だ。

   赤道に匹敵する帯脈を開けるということは、12経絡が帯脈に交わる点を全て開く、ということになる。つまり、帯脈回しは12経絡を開く動きだということだ。ここまでできれば気功法はかなり高度になります・・・

 

  とりあえず、回せ!

  分からなくても、継続しながら深めていきます。

  

 

 

2024/6/18 <沈肩をしても腕は落ちない 肩の関節達>

 

 命門の話はまた続きがありそうなのだけど、最近のレッスンで気づいた腕、肩の話を少し書きます。

 

 課題に気づいたのは、生徒さん達に甩手をやってもらった時のこと。

 普段は甩手を全く練習しない私達ですが、ある生徒さんが甩手を話題に出したのをきっかけに、試しにやってみようか、ということでやってみた。

 やってみると、生徒さん達の腕の振り方が、あれ?っという感じ。どこか変。

 どうして変なのだろう?と観察していて、あ〜!、と気づきました。

 腰の王子の「ここからクルン♪」体操だ!!!

 

 今年3月のメモに載せた下の画像を見てみて下さい。

 4人が一斉にここからクルン♪をしています。

 が、よ〜く見ると、左腕のクルン♪の仕方がそれぞれ違います。

 

両端にいる男性達。

肘から下しか回っていません。

肩の関節は置いてけぼり。

 

 これに対して、中央右の女性。

 こちらは、肩だけをどうにかひねくり出しています。腕が”クルン♪”とは回っていません。

←https://youtu.be/b4GKo1gHG-M?si=Jf5o5qy-GyP169sb

 

 このフィジカリストの方も王子のように”クルン♪”とはなってないかなぁ。

ただ腕を開いただけ。

 

 実は、肩関節(肩甲骨上腕関節)だけを使おうとしてもうまくいきません。肩関節より上に位置する肩鎖関節、第二肩関節も使う必要があります。そのための「ここキャラ↑クルン♪」 脳天から突き出る裏声です。

 息を吸って肩に息を入れる必要があります・・・

 四股も同じ。

2024/6/15 <命門の話 その2 踵との関係>

 

  寝転んで脚を十分脱力し、踵を股関節から引き離すように遠くに置くと腰が床に向かって沈んでいくような感じになる。べた〜っと床に身を任せられるようになる。

←https://youtu.be/NOZP8SD1ftk?si=uXowcv8-r8sa14Um

こんなふうに寝られるようになる。

 

 

この寝方で分かることが、踵と腰の関係。

 

 そういえば、師父の圧腿は、踵をひっかけて引き伸ばすようにしていたが、それは、バレエのリンバリングでも同じだった。

 踵を伸ばすのと、足首を伸ばすのは全く違うのだ・・・

 

 今日もレッスンで生徒さん達に実験をしてもらったが、踵を引き伸ばして座れば長座が簡単にできる。体育座りも簡単だ。どちらも両手を離しても安定する。それは骨盤が立つからだ。骨盤が立つ・・・実は、骨盤が立つ時、命門が開いている。命門が開かないと骨盤は立たない・・・

 

 画像で説明しないと分かりづらいかな? 

 

 例えば、横開脚のストレッチ。

 典型的な圧腿と、バレエストレッチの比較です。

 (圧腿:http://www.tongbei-japan.com/tongbei_introduction_04_basic_trainings.html

 バレエストレッチ:https://youtu.be/eNpRe9woHBo?si=cfTf3a1GPqQAxAxL)

 

 

 この二つの大きな違いは、軸脚と上げた脚が連動しているか否かです。

 典型的な圧腿は上げた脚のみストレッチしています→壁が倒れたら自分も倒れます。

 バレエでは常に軸脚に乗っています→軸脚を伸ばしたり曲げたりすることができる。

 バレエでは、片足で脚を上げたり、片足でジャンプの着地をしたりするので、軸脚と上げた脚は常に連動させています。

 

 連動をかけるには、骨盤の中で両脚を引っ張り合いさせるような力が必要になります。

 片足を上げると骨盤が傾きそうになりますが、それを傾かせまいとする反対向きの力が軸脚の方からかかってくる、ということです。骨盤のストレッチがかかり骨盤は立ったままになる、というのが連動の原理です。典型的な圧腿は骨盤の中のストレッチを念頭に置いていません。

 

  二者のストレッチの仕方をよく見ると、圧腿の方は体が上げた足の方に倒れているため踵はそれほど引っ張り出されていません。バレエの方は、上げた足の付け根(股関節)を踵から引き離すようにしているので(体を軸脚の方に乗せているので)、その結果、脚は伸びて踵も引っ張り出されています。踵が引っ張り出される時は骨盤、腰が使われる・・・(やってみると分かります)

 

  前方へのストレッチも同じです。

  軸脚に立てるようにするのがバレエ系ですが、師父はまさにバレエの人のようなストレッチをします。これが全身を連動させるストレッチだからです。

  カンフー的なストレッチは右側ですが、太極拳的ではないかも。少林拳や長拳などの外家拳的な感じがします(全身の連動からくる勁ではなく、力で打ったり蹴ったりするようなもの)。

 

2024/6/14 <命門の話 その1 弓歩との関係 >

 

 オンラインや対面でのレッスンの重点は脇から命門に変わっている。

 

 命門、文字通り、命の門。

 なぜ臍の裏のこの場所が命の門と言われるのか? 

 そして、なぜ、この命の門を開くことが大事なのか?

 いや、一体、命門を開く、とはどういうことなのか?

 

 私も師父から太極拳を学び始めた頃、命門を開け!と毎回のように言われながら、ただ「腰を丸く」していた。命門を開く感覚が分かるようになったのは随分後の話。いや、その感覚もそれから進化して、最近やっと、それが”命の門”と呼ばれる意味が感じられるようになったばかりかもしれない。

 

 少し前のメモ(5/19)で、ヨガっぽい四股の形と、本当の四股の形を比較したことがあった。そこで大事なことを故意に書かなかったのだが、両者の違いは、命門を開いているか否かだ。相撲の四股は単に股を開いているのではない。彼らの言葉で言うなら「腰を割っている」、のだ。ここに息を通すのだ。この、腰を割る、という感覚が、命門を開く、に近い。

 命門を開く、だと、単に腰を割るというだけでなく、そこに”息を通す”という感じがある。

 

 四股や弓歩、馬歩など、腰を下ろした時に、命門を開けられないのは致命的な問題になる。まず、命門が開けないと丹田ができない(作れたとしても腹の前の方だけで固めたような硬直した丹田しか作れず、使い物にならない)。そして、命門が開けないと、腰を下ろした時に、すぐに前腿、膝上に乗ってしまう。腿が重くなり足裏の力が使えない→地面の反発力を使えない。

 

 今週のNHKの明鏡止水は拳についてだったが、その中で武術翻訳家、と自称する岡田君が見事に説明していた。

 ゲストはボクシングの世界王者、中谷潤人選手。

 

 ↑ボクシングと武術は共通点がある、という指摘。

 

  この”体を一つにする”=周身一家にする、というのは太極拳も同じ。

  これが目指すのが太極拳の練習だ。

 

  上の”膝が出る”という問題(つまり、前腿問題)は、股関節が十分起動していないことが原因だ。そして、この番組では指摘していなかったが、股関節が使いづらくなる大きな原因が、腰。腰の硬さだ。

 

  腰が硬くなれば股関節も固まってくる。

  たとえば、高い所から飛び降りた時に、腰を伸ばして着地したら、膝にものすごい衝撃がくるだろう。とっさに腰を丸くできなければ(腰を緩められなければ)股関節も曲がらない。結果、膝が痛んでしまう。 歳をとると股関節や膝に支障が出てくるのも、腰が原因(背骨が原因)。

 

  岡田君は、尻を落とす、という言い方で膝問題の解決を提唱したが、実は、これは、腰を内側から広げて尾骨まで使えるようにする、ということをかなり単純化して表現したものだ。

  上の中谷選手と岡田君の姿勢を比べてみると、中谷選手は尻を落とすのではなく、腰(命門)を広げている(正確には背中、背骨を広げている)。その結果、後ろ足の左足がしっかり床を蹴れている。岡田君の方は腰を広げられていないので後ろ足が弱い。動きが止まってしまう。ただ単純に尻を落とすだけではそこに居座ってしまうということだ。

 

  太極拳の弓歩の体重移動でも要は命門を広げられるか否かだ。命門は帯脈ラインにあるが、そこが体の中心として機能する。丹田は下に沈めても、帯脈(ウエストライン)は丹田の一部であり続ける必要がある。つまり、丹田も拡げられる必要がある。

 

  レッスンでは踵と腰をダイレクトでつなぐ方法を伝授。腰の王子の寝転び方を学ぶとその感覚は簡単に体験できる。これを立位で行うにはかなりの練習が必要だが、立位や座位でウエスト(腰)と足をダイレクトにつなぐ癖をつけていけば、立位もできるようになるだろう・・・

 

  命門は奥が深いので続きはまた。

2024/6/11 <脇の振り返り、肩関節と股関節の連動>

 

 メモをしばらく書く時間がありませんでした。

 腋や脇の話・・・腋を深くすると、そこは肩関節。肩関節を下側から探った形になります。

 腋から肩関節の隙間を広げることで、腕が根本から(つまり肩関節から)使えることになる・・・

 

 街で歩いている人を見ればわかりますが、腕を根本から振って歩いている人はほとんど使っている大人は滅多にいない、というよりも、まず見たことがない・・・。子供は大丈夫かというと、大きなランドセルを背負っている小学生低学年で、既に肩と腕が癒着しているような子も多いのが現実。目、首、肩は人生の早い時期にアライメントが崩れてしまう。腰や股関節、膝に支障が出てくるのはもっと後の話。

 

 太極拳でも歩法を取り出して練習することもあるが、最終的には、股関節は肩関節とセット。連動して動く。肩関節が(ちゃんと)使えていないなら(=腕が”付け根”から使えていないなら)股関節も(ちゃんと)使えていない(腿の根っこから使えていない)。

  関節から骨を使う、というのが体の本来の使い方だが、大人はそう簡単にはいかない。いろんな癖や力みがあって、関節ではない所に力を入れて動かしたりしている。

  この癖をとっていくのが太極拳や合気道、その他、ただの筋力ではなくて、体丸ごとを連動させて動くような身体開発法だ。今ではさまざまなスポーツでもそのような練習が取り入れられている。

 

  話を腋や脇に戻すと・・・

 王子の「脇に秘められた力」という動画の冒頭では「脇肋が開く体操」と言いながら、手を脇に差し込んでいる姿が見られる。(https://youtu.be/z4zLeovPZsg?si=pq5LYGpra4b1A5au

←https://youtu.be/dhnwfYpZ9lI?si=qx7rfaHziA_0oJYa

 

大谷君と隣の水原氏の歩き方。

腕の振り方に着目。

水原氏の感じが、普通街で見かけるもの。腕を振ってはいるのだけど、根元からは振っていない。

大谷君は根元から振っています(本人は何も意識していませんが、体がそうなっている)

  根元(肩関節)から腕が振られると、肘関節と手首の関節も連動して動きます。大谷君の方は、微妙に肘と手首がパラパラと振られているのがわかります。まさに、”甩手 (shuai shou シュワイショウ スワイショウ)です。

  一方、水原氏の方は肩関節から腕を使っていないので、腕が一本の棒のまま動いています。つまり、肩、肘、手首の関節が動いていない。

 

  肩関節が使えていないと、股関節も使えません。

  大谷君は股関節が回転していますが、水原氏は膝の屈伸で歩いているような感じ。これもよく見かける歩き方。

 

  つまり、歩き方を下半身だけで作ろうとしても無理で、前足である腕、肩関節を整える必要があるということ。この点は腰の王子も同じようなスタンスです。

2024/6/3 <引き込むー合 と 出すー開>

 

 前回の前鋸筋に関するメモの追加。

 

 一つ目。

 前回のメモの最後に貼り付けたリンク先にある、最初の前鋸筋トレーニングの例。

https://ar-ex.jp/sakudaira/652557814209/%E3%82%8F%E3%81%8D%E4%B8%8B%E3%81%AE%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0

『今日のメモ』毎日の練習は気づきの宝庫。太極拳の練習の成果が何に及ぶかは予測不可能。2012年9月〜のアーカイブは『練習メモアーカイブ』へ

動画適宜アップ中! 

YouTubeチャンネル『スタディタイチ』→こちら

⭐️どのレッスンも単発参加OKです。お問い合わせへ

練習のバイブル本

 『陳式太極拳入門』

   馮志強老師著

お問い合わせはこちらから

 

2012/3/20

日本養生学会第13回大会で研究発表をしました。

発表の抄録、資料はこちら